「クリストファー・ノーラン meets ミッション・インポッシブル」TENET テネット しろくまさんの映画レビュー(感想・評価)
クリストファー・ノーラン meets ミッション・インポッシブル
クリストファー・ノーランはこれまでも「時間」をテーマに作品を作ってきたが、本作もその系譜に連なる。
映画は時間芸術である。こうした映画の特性を活かした優れたアイディアには脱帽するしかない。
そして本作は、クリストファー・ノーランによる「ミッション・インポッシブル」のよう。
組織の一員に過ぎない主人公が、いつの間にか世界を救う闘いに巻き込まれる。派手なアクションシーン。そして敵か味方か分からない美女が登場する、というのも似ている。
まったく飽きさせないし、かつ、何が起こるか分からないので、一瞬も目が離せない。
娯楽性は十分で、たっぷり楽しめる。
加えて、特筆すべきはメッセージ性。
主人公たち3人は、それぞれ異なる背景を背負っていたが、ラスト、それぞれが自分の人生を自ら選び取る。
はじめは誰が自分の雇い主か分からなかった主人公「名もなき男」は、この闘いが自分自身が始めたものだと理解し、自らの意思で動き始める。
ニールは、死ぬことになると分かりながら、「名もなき男」を助けに行く。
「船から飛び降りた女性の自由さがうらやましい」と話していたキャットは、自らの意思で夫を殺し、そして、過去の自分がうらやんだ「船から飛び降りる女性」となる。
このように3人とも、それが自分や世界の破滅につながる危険性があっても、自分の意思による選択をおこなう。
ここにクリストファー・ノーランの自由精神が感じられる。
娯楽性とメッセージ性を両立し、かつ、誰も見たことがない映像を見せてくれた。
すさまじい傑作である。