「映像を楽しむ作品か、と。」TENET テネット スキピオさんの映画レビュー(感想・評価)
映像を楽しむ作品か、と。
もう公開からだいぶ経っているので、ネタバレでもokですかね。
ストーリーを簡単に言えば、007シリーズです。ボンドはポリコレの関係で黒人が演じます。ボンドガールは初の子持ち人妻です。しかも敵キャラの奥さん。でもポリコレなのでボンドはプラトニック。フリンはいけませーん。
007なので当然、敵は共産主義の末裔でテロリストです。あ、アストンマーチンの協力が得られなくて、ボンドカーは無しね。で、当然ボンドは国と世界を救うのですが、何故かCIAです。で、Mはインド人のおばさんになっています。やっぱ世界最大の映画大国ですからね。
ここまでは簡単で、今回の赤いお友達は、時間の流れを変えることが出来るんです。さー困った。けど、ボンドが知らないところでちゃんと研究されていて、こちら側も時間を操ることが出来るんです。途中から味方になる金髪イケメンが黒人ボンドを助けてくれます。
で、最後は地球を滅ぼそうとする赤いお友達をボンドガールがやっつけて、赤いお友達の陰謀も金髪イケメンと黒人ボンドが未然に防いで、ハッピーエンド。
という基本線を抑えて、あとは時間逆行の映像を楽しんで観れば良い映画でしょう。物語も前半は時間に順行して、その時に?って部分が後半の逆行部分で伏線回収される、という組み立てになっています。繰り返しているとか、ループしている、と思う人がいるかもしれませんが、そうではなく、主人公たちは未来へ進んでいるのに、周りが過去に遡っている、という世界観です。
あまりたいしたSF設定がある訳でもないので、何故時間逆行が起きるのか、どういうルールで逆行するのか、といった設定を掘り下げても仕方ない。途中までは回転ドアみたいなので順行と逆行が入れ替わる設定だったが、ラストバトルは「赤チーム順行、青チーム逆行」って勝手に選択でき、「途中で逆行から変わってきたわ」とかいう奴も出てくるので、その設定も反故になっていたり、です。
じゃあ何を楽しむかと言えば、映像。順行と逆行が同じ画面で展開したり、カメラを逆回転にしているだけでなく、演技で逆行を表現したりしている映像を楽しむ映画ですね。こんな映像撮りたいな〜、じゃあストーリー作ろう!って順だと思います。
こういう設定やストーリーが楽しみたければ、数年前にやった邦画で「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」をお勧めします。本作のようなリアルタイムで時間逆行ではないのですが、とても綺麗に騙されます。なかなか良くできた話ですよ。
まあ本作で考えさせられるとすれば、あの金髪イケメンは、人妻ボンドガールの息子でしょ?で黒人ボンドが「俺が黒幕だ」と言っているように、未来の世界で過去改変を阻止すべく、大人になった金髪イケメンを過去へ送り込んだ訳だ。
それって、未亡人になったボンドガールと結ばれて義理の父親になっていたとしたら「母親と俺を救う為に過去へ行け!」と言ったのかな〜。
若しくはボンドガールとは結ばれず、偶然、大人になった金髪イケメンがCIAに入り黒人ボンドの部下になる。で、テメエのキチガイ親父の始末を息子のお前がとってこい、と送り込んだのかな〜。
いずれにせよ金髪イケメンの顛末を知った上で送り込んだ訳だから、黒人ボンドも非情だよね、と。