劇場公開日 2020年9月18日

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「逆行する映像の世界に活躍する順行の主人公の斬新な面白さと謎だらけの困惑」TENET テネット Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0逆行する映像の世界に活躍する順行の主人公の斬新な面白さと謎だらけの困惑

2020年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

時間が逆行する装置の謎に翻弄されるCIA工作員の恐怖を同時体験させられるSF映画。その逆行する映像に進行する主人公が活躍するという、複雑怪奇な趣向が映画的な面白さになっている。大型旅客機の暴走シーン、高速道路での派手なカーチェイス、そしてラストの戦闘シーンのスペクタクルと見応えのある作品には違いない。IMAXの臨場感たっぷりの劇場鑑賞の、今日的な映画の醍醐味は味わえた。また、音響効果の体感度が高く、船内シーンでカメラワーク外の波の音が聞こえる精密さには感心してしまった。ただ、世界の破滅を目論む武器商人ケネス・ブラナーに仕える部下たちのモチベーションが理解できないし、ケネス・ブラナーの真意も表現しきれていない。謎が多い脚本を理解するためには、何度も観ないといけないとすると、これは新手の商業映画の策略にまんまと嵌められるのではないか。それを良しとする楽しみがあるのも否定はしない。演技面ではセイターの妻キャサリンを演じたエリザベス・デビッキにしか魅力を感じなかった。
クリストファー・ノーラン監督の創作意欲には、ある程度の敬意を感じる。それは、けして独りよがりの自己満足に陥ってはいないからだ。

Gustav