「順行と逆行が共存する映像が圧倒的」TENET テネット くりあさんの映画レビュー(感想・評価)
順行と逆行が共存する映像が圧倒的
原子力兵器の材料を武器商人に渡らないよう諜報員が暗躍する話のはずが、時間を逆行する物質や技術が現れ、状況が複雑になっていく。
なにが起きているのか、なにが起きたのか、何を起こしたのか。
なにが起きなかったのか。
ある時は普通に、ある時は時間を逆行して、折り畳まれた物語は非常に密度が高く、練られた展開は素晴らしい。
こういうきっちりハマったストーリーは好物なので大変楽しかった。
高密度なことが逆に、伏線の違和感ある小物や登場人物の数からの逆算で展開が読めてしまうのはご愛敬。
ただ、登場人物の物語としてこれで完結で良いとは思うのだが、そもそもの未来における発端などいくつか一切触れられないままの謎が残っており、そこは不満が残る。
(続編や前日譚を入れる余地があるので、監督が違う駄作な2が作られそうだ)
あと、妙に科学的正しさを入れ込む演出はやりすぎな気がしないでもない。
「火をつけた結果常温になるということは、もともとが常温より冷えていたからだ」「崩れている建物が再生してまた崩れる」などは、映像的に面白いがパラドクス生みすぎでは。
永久機関ができてしまうことが別の問題を生みそうだが……。
さて、無駄シーンが削られた密度高い展開、それを支える演出と高い映像技術、スピード感あるアクションは高評価。星4。
ヒロインに見覚えあると思ったら、ナイトマネジャーで「主人公に協力する武器商人の愛人、息子が半ば人質的な弱点なジェド」役のエリザベスデビッキだった。
また似たような役を……。