劇場公開日 2020年9月18日

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「4D楽しい」TENET テネット Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)

4.04D楽しい

2020年9月27日
iPhoneアプリから投稿

時間が順行している世界では、ふと気がつくと部屋が散らかっていることは当たり前で、ふと気がつくと部屋が片付いていることはあり得ない。「時間の門番」エントロピーはカオス・乱雑を増大させ、決して減少させることはないからだ。
エントロピー増大の法則は「時間の矢」と同じように、一方向にしか変化しない。

「時間の矢」によって我々には過去しか記憶できないので、時間が「過去から未来へ進む」と感じる。我々の記憶は過去の方向だけを向いている。

そこでノーランは時間の逆行、未来の記憶を体験させてくれた。同じエネルギー量の反対のベクトルが働く現象に興奮した。

「未来」だろうが「過去」だろうが、人は自分が体験したことを記憶する。「何が起こったかを脳に蓄える」ことが、エントロピーが増大する方向の現象だとすると、時間を逆行するということは、記憶のエントロピーは減少するのではないか。

本作で私がハッとしたのはまさにこの点だ。人の記憶や情報は、物質じゃないから減少しないのだ。
いくら時間を逆行できたとしても、起こったことは記憶される。
地球を取り巻くみんなの情報や集合意識を減少させることは決してできないのだ。なんだか恐ろしい。

それにしてもニールは今まで何回ループしてるんだろう。
そして主人公はこの後何回ループするんだろう。

自分の意識の中で毎秒繰り返される選択だけが、自分の物語を作る。

Raspberry