「シンプルな物語!新しい映画体験!」TENET テネット Mさんの映画レビュー(感想・評価)
シンプルな物語!新しい映画体験!
第三次大戦を防ぐスパイの主人公の目的は物語的には物凄くベーシック。
主人公が突き動かされる「爆弾」となるファムファタール役キャットとの「分不相応」の恋心とミッションの狭間で揺れ動く主人公の姿もベーシックなスパイもののセオリーではあるが、
彼らのビジュアルが背の高いモデルのような美しい女と背の低い黒人のスパイとして、そのつり合いの取れなさがまた新鮮な主人公とヒロインの形に思えた。
とにかく、キャットの固い氷の心を溶かした者にのみ見せる人懐っこい笑顔に惹きつけられた。
あの笑顔が主人公の「爆弾」となったのには納得だった。
時間やタイムパラドクスの仕掛けは、かなり、難解。。
それを紐解こうとしても、自分にはとうてい無理だし、紐解く必要もないように感じた。
必死に頭を回転させ、眼をかっぴらいて、そこでこれから起きる出来事や、過去に起きていた出来事を、目撃し、体験していくうちに、あの世界に必死に食らいついている感覚が、名もなき主人公と同化して、ぐるぐると引き込まれていく感覚になっていった。
そして映画が終わる頃には、現実に引き戻される。
きっと監督は全ての時間軸や難解な部分を紐解き、解釈した上でのカタルシスや作品の評価を期待していなかったのではないか?
難解な事象、時間軸を、凄いスピードで展開して、観客が咀嚼する時間を与えないまま、作品に引き込む時に起こる作用を狙っていたのではないだろうか。
なんて、都合の良い事を考えつつも、たしかに、ある時間のパラドクスの世界から生還した気持ちで、満足しながら、劇場を出たのであった。