「モラ夫やっつけ隊。」TENET テネット ゼリグさんの映画レビュー(感想・評価)
モラ夫やっつけ隊。
予想の5倍意味わからなかった。
ただ、それを全部理解する必要はない。
作中でも言っていた。
「何を」ではなく「どう」するのかが大事だと。
要するに、死なばもろとも精神のモラ夫をしばく話である。
何ともシンプル。売りは映像だ。
だが、逆再生だけだとやはり絵的に飽きてきてしまうし、あまりの難解さについて行けないのだろう。
キャラクターも強いとは言えないかもしれない。
そのあたりが低評価の理由な気がする。
CGをほぼ使っていない映像は迫力満点だった。
もうそれだけで僕は高評価にしたいのだが、一番気に入っているのは「匿名性」だった。
西部劇じゃあるまいし、こんなA級作品で主人公の名前を出さないのは凄い。
そもそも、これだけ仰々しいミッションを与えて、大事件を起こしておきながら、最後まで組織の事がいまいち分からないのである。
こういう余計な物を取っ払っている感じは好きだ。
主人公とヒロインが変に関係を作るわけでもなく。
ちなみに、恐らくだがニールは成長して過去に逆行してきたマックス(キャットの息子)である。
その辺りも説明はない。説明不足というより、普通の映画で説明するような事をあえて説明していないのだ。
逆行という特性上、主人公達が結局何のための何をやっているのかが掴みづらいという点はある。
だが、そもそも逆行→順行のシステムを理解しないと無理だろう。
要するに、自分で歩いて過去に戻るタイムトラベルである。
機械で逆行し、どこかの時点で順行(通常の時間の流れ)に機械で入り直さない限り、リアルタイムでいつまでも過去に行き続ける。
機械に入って順行した時が過去へのタイムトラベルの終わりであり、そこからは過去の時代を生きることになる。
これを理解していないと、勘違いして矛盾だと思い込んでしまう。
どこから誰が行動を始めたかなんて分からない。
つまりこの映画はドラえもんの映画と同じシステム。
始まった時には全て終わっている。
分からないなら、これから50回観て掴んでいけばいい。
1回で分からないなら駄作、そんな訳がない。
何回も観る気にならないというなら、それはその人に合わなかっただけ。
僕はノーラン信者ではなく、あまり好きじゃない作品もあるのだが、これは本当に傑作だと思う。
「難解なのがいい」なんて、そんな事は言わない。
モラ夫から奥さんと世界を逆行で救う。
それが好きか嫌いかというだけの話。
僕は好きだった。