劇場公開日 2020年3月13日

  • 予告編を見る

「ドラマとはまた違った素晴らしさ」ナショナル・シアター・ライブ「フリーバッグ」 JYARIさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ドラマとはまた違った素晴らしさ

2023年8月5日
iPhoneアプリから投稿

第四の壁を破って語りかけてくるドラマ版とは異なり
まるで落語の様に一人何役もこなすフィービー
やはり天才なのだと思わされる。

間とかしつこさとか完全に向こうのペースなのだけど、
段々とのまれていって、いつの間にか抜けられなくなっているような状態だった。
一人芝居ってやっぱとんでもなく凄い。
こんなん出来る人、名の知れた俳優でも限られていると思う。

そんでもってストーリーもすごい。
ずっと笑わせ続けているかと思いきや、
時折挟まれるブーへの追想。
そして最後には「何で笑っているの?」とぶちかます。

ドラマ版よりもモルモットが象徴的に使われていて、
終盤ではモルモットはテーマだって言い切ってる。
つまるところ、
モルモット=自分自身=セルフケア
がテーマなのだと思う。
最後に本人がぶち撒ける通り、
彼女は自分自身ありのままを語る。
私は、性格が悪くフェミニストにもなれない、
正直すぎる故に、ヤバいところに踏み込んでしまった感が凄かった。
やっぱり最も救いや癒しを求めているのは彼女自身なんだけど、人に甘える事が出来ない彼女は結局、性行為に依存する。その時だけ生きた心地がすると話す彼女の心は死んでいる。そして誰も動かす人はいない。心はすり減っていて、いつの間にか性行為は自傷行為になっている。
序盤あたり、自分の身体を与える代わりに金を貰って納得している所から、彼女は病んでいるのだと思う。

そして、フェミニストではないと言いつつ、
やはり伝統的な価値観からは"模範的な女性"
とは言われないであろう彼女は、
それでも"模範"に縛られた姉を救おうとする。
とんでもなく母や姉やブーを愛している。
しかし、心を交わせなかった。
一瞬、交わった様に見えた姉とも、
またクソ野郎マーティンのせいで、すれ違う。

それでも、消しゴム付き鉛筆で自らを例える彼女は、
自分で自分自身を救うしかないのだと、考えている。

とにかく泣きそうになりながら観てしまったけど、
この流れでドラマのS2観たら最高でしょうなあ……。

JYARI