「浮気をめぐる珍奇なファンタジーと思いきや。」今宵、212号室で 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
浮気をめぐる珍奇なファンタジーと思いきや。
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夫に浮気がバレた妻。しかも問い詰めてみたら、浮気の数が尋常じゃない超常習犯だった! 冒頭のツカミに思わず笑ってしまう。やがて物語は夢うつつの世界に迷い込み、会いたい人、会いたくない人がのべつまくなしに乱入してくる。演劇的といえば演劇的だし、空間と時間の広がりは映画的でもある。
形としては古典的なドタバタ喜劇だと思うのだが、妻も夫も、最初の印象以上に「夫婦」という関係を信じていることがわかってくる。世間一般的な「いい夫婦」ではないが、明らかに他人には伺い知れない結びつきがあるのだ。
「理想の夫婦」「夫婦があるべき姿」なんてものが幻想なのはわかっているつもりだが、この夫婦のあり方にしみじみと共感するのは難しい。しかし、人生の点描を交えて語られることで、この二人にはアリなのだろうと納得させられるものがあった。大きなことを学んで改心するのではなく、やはり不器用なまま言葉を交わすラストシーンの夫婦の姿がとてもよかった。
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