「伝統的な男女の会話劇を興味深い見せ方と空間性で紡ぐ」今宵、212号室で ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
伝統的な男女の会話劇を興味深い見せ方と空間性で紡ぐ
妻が夫に内緒で長らく続けてきた情事。それを今改めてつまびらかにしたとしても、私たち夫婦には長年の信頼があるんだから別に問題ないでしょ?と言われても、夫は夫で易々と納得できないわけで、結局彼らは一晩の熟慮期間へ突入するのだが・・・。かくもフランス映画らしいといえば非常に「らしい」本作。よくありがちな男女の会話劇として形作ることも可能だったろうが、しかしオノレ監督は二人が暮らした部屋と、それを向かい側から客観的に覗きみることができるホテルの一室を用いることで、そこに不可思議な空間性を出現させる。さらに時間や空間を超えてゆかりある人々が部屋を訪ねてくることによって、人間関係がファンタジックに可視化され、物語が「横へ」の広がりを持って、ユニークに紡ぎあげられていく。二部屋に挟まれた通りにはなぜか映画館が。この国では、人と人が愛を育む媒介として映画が欠かせないのだと暗に示しているようにも感じられた。
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