「【多くの人を愛したテノール歌手の大男は、多くの人の心を魅了し、太陽のような笑顔と共に記憶に残る男になった・・。ロン・ハワード監督が、優しき視点で彼の人生を描き出した素晴らしきドキュメンタリー映画。】」パヴァロッティ 太陽のテノール NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【多くの人を愛したテノール歌手の大男は、多くの人の心を魅了し、太陽のような笑顔と共に記憶に残る男になった・・。ロン・ハワード監督が、優しき視点で彼の人生を描き出した素晴らしきドキュメンタリー映画。】
■印象的なシーン
・パヴァロッティがパン屋でテノール歌手だった父の影響でオペラ歌手を目指す決意を後押ししたのが、彼の母親であった事。
ー母親の慧眼に驚くと共に、彼の女性に対する優しさの由来はここから来ているのではないか・・-
・パヴァロッティが史上最高のテノールと言われていたディ・ステファノの代役でステージに立ち、高音域Hi-Cを炸裂させ、大成功を収めるシーン。その後も彼は「連隊の娘」でHi-Cを9回披露し、確固たる地位を築いていくシーン。
ー若き頃の破竹の勢いと、持ち前の高音域の強さをフルに発揮した歌唱シーンに震える。又、彼はこの後も”代役”がきっかけで、別領域の音楽世界へも進出していくのだ・・。-
・最初の妻と三人娘たちとの関係性。特に娘さんのジュリアーノが病に侵された時、周囲からの非難もものともせず、公演を全キャンセルし、傍についてあげる姿。
ー後年の娘たちとの確執も、幼き時の父親のふるまいを見ていれば、時間はかかるが、氷塊するよなあ・・。良き父親であった数々のシーン。-
・1987年、若き天才テノールと謳われていたホセ・カレーラスが白血病に侵され彼を見舞うパヴァロッティ。そして、彼の復活を祝って行われたローマ・カラカラ浴場でのプラシド・ドミンゴを誘っての3人の感動的な競演シーン。
ー普通は、”俺が、俺が”となるところを(もともと仲が良かった三人であるそうな)舞台上で”三人で話し合い、君が、君が・・”と譲り合って歌うパートを決めるシーン。
そして、最後の揺れるような万雷の拍手とスタンディング・オベーション。
素直に感動する。-
・1991年、イギリスを未曽有の暴風雨が襲い、チャリティコンサートを開催した際に激しい雨の中、自ら傘を閉じた(そして、徐々に民衆も傘を閉じていく・・)ダイアナ妃を見つめてパヴァロッティが歌った(と見えた・・)「見たこともない美人」
ー故、ダイアナ妃はパヴァロッティからユーモア、人を心から愛する気持ちを貰い(そういった時期だった・・)パヴァロッティはダイアナ妃からチャリティの大切さを学んだのだな・・。
二人が楽しそうに話をする写真の数々。-
・1992年、METでコンサート予定のブルース・スプリングスティーンがキャンセルした後釜を必死で探したプロモーター、ハーヴェイ・ゴールドスミスが必死になって見つけた”代役”とは・・。
ー成程、ここからロック界との交流が始まったのか・・。全く覚えていないぞ・・。-
そして、パヴァロッティは「パヴァロッティ&フレンズ」として、スティングたち、ロック界の大物と同じステージに立つ。だが、オペラ界からは良く思われず・・。
◆観客たちの言葉
”彼の”あの声”を聴きに来たんだけれど、そこまでではなかったね・・”
ーこういったオペラ界の反応に対しての、U2のボノの言葉が素晴しい・・。
”歌の事が分かってないね。彼の今の声は様々な経験を重ねてきたから出る声なんだ・・”
つまりは、パヴァロッティの若き頃のテノール声は横隔膜をフルに活用した、Hi-Cを武器にしていたが、老年期に入れば歌い方も変わるし、観客もいつまでも昔のパヴァロッティを追うな!という事が言いたかったのではないかな・・。-
・又、パヴァロッティがボノにシツコイマデニ歌を書けよ!と迫るシーンもユーモアが漂い、微笑ましい。それにしても、凄い押しである。
”今、ダブリンにいるんだよ・・By ボノ”
”うん、今、僕もダブリンに着いたところ・・By パヴァロッティ”
笑ってしまったよ。でも、あの笑顔で攻められると、断れないし、憎めないんだよなあ。
■そして、ラスト
パヴァロッティの「誰も寝てはならぬ」の心に染み渡る歌声で映画は終わる・・。
<3人の女性と子供たち、ダイアナ妃、ロック歌手たち、そして何よりもオペラを愛し、人間を愛したパヴァロッティのユーモア溢れる姿、ちょっと我儘な姿も含めて優しき視点でロン・ハワード監督が一人の大男の人生を描き出した素晴らしきドキュメンタリー映画である。>
やっと今日、映画館で鑑賞してきました。
女たちのインタビューが、どれも素敵。自己表現から言葉選び、そして表情の魅せ方まで。
(女優ではない素人の家族や関係者の語りとは思えません!驚き)。
“パン職人の夫の歌には心動かされなかったが息子の歌にはそれが有った”とお母さん言ってましたね、
客席で吹き出してしまいました。
NOBUさんのレビューでまた泣きそうになりました。細部までなんて素晴らしい💕ロン・ハワード監督って凄いんですね(って、私知らなかったんです。息子がハワード監督のこと言ってて、え~、あのシリーズもこの監督~、ジャンル超えて~と自分のあまりの無知に感動してしまったぜ、です)。