「ドキュメンタリーとしては…」パヴァロッティ 太陽のテノール キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
ドキュメンタリーとしては…
彼の才能と功績を再確認する映画。
もちろんステージのシーンは圧巻。
有名な曲をじっくり見せてくれる。
今回あえてドルビーアトモスで観賞したのは非常に意義があった。
3大テノールの競演映像も、久しぶりに見て「素晴らしい」の一言に尽きる。
いろいろなインタビューや番組で見せるチャーミングな人柄もまた好感。
ただ、俗な言い方で申し訳ないが、いわゆる「ファンムービー」的な要素が強くて、ドキュメンタリー映画としては評価しにくいというのが正直な感想。
「歌の才能は言うまでもなく、人間的にもユーモアに溢れて社交的、家族思いで芸術への造詣も深く、後進の指導にも熱心で慈善事業にも力を尽くしました」とさ。
もちろん輝かしい半生なんだけど、それはほぼ「公式プロフィール」。彼のファンならある程度皆知ってることなんじゃないの?
妻以外の女性を愛してしまったことは、彼にとって本当にあるべき結末だったのか、クリスチャンである彼に罪深いという意識はなかったのか。
その後バッシングを受けた当時をどう振り返るのか。
そんな、表には出ていない、ここで明かされる秘密、その他オペラ歌手として天才ゆえの葛藤や苦悩や孤独は無かったのか。
そういった彼の内面的な戦いへの掘り下げがもう少しあると、彼の人間としての深みがより強く感じられたと思う。
(もちろん部分的に内面を語ろうとするシーンはあるけど、どれもチラッと触れておしまいなんだよね。)
もちろんパヴァロッティがあらためて好きになる映画ではあるのだが、とても表層的な部分しか語られていない気がしてスッキリしなかった。
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