「【一人の弁護士が、超巨大企業が40年に亘り環境汚染物質を垂れ流していた事実に対し、法廷闘争を10年以上続ける姿に心打たれた作品。法に携わる者は、弱者側に立て!と言う教えを思い出した作品でもある。】」ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【一人の弁護士が、超巨大企業が40年に亘り環境汚染物質を垂れ流していた事実に対し、法廷闘争を10年以上続ける姿に心打たれた作品。法に携わる者は、弱者側に立て!と言う教えを思い出した作品でもある。】
ー デュポン社の環境汚染問題が、2016年に公になった際の衝撃は覚えている。
何故なら、私が勤める会社は、毎年、デュポン社の安全コンサル評価を受けていたからである。
デュポン社との契約を安全統括部が、速攻で打ち切ったのは言うまでもないが、恥ずかしい限りである。
それにしても、何故、アメリカを代表する大手化学メーカーは、愚かしき行為を半世紀近く行って来たのか、そしてその事実を隠蔽してきたのかが、この作品を観ると良く分かる。
テフロン加工のフライパンが出た時の、世間の評価は当然高く、利益を生み出す商品の一つであったからである。
歴史的な流れ”撥水”も寄与していると思う。-
◆感想
・環境弁護士ロブ(マーク・ラファロ:今作の製作者。深い尊崇の念を抱く。)はウェストバージニア州の農夫テナントから、ある日アポなしで訪問を受ける。
彼は、自分の土地がデュポン社により汚染されていると、激しい口調で訴える。
- ここで、彼は一度はテナントを追い返すが、祖母の紹介という事もあり、後日テナントの元を訪れる。
彼の妻サラ(アン・ハサウェイ)の言葉が印象的である。
”彼は、学生時代人間関係構築が上手くなくて・・。それで、自分を頼って来る人にはNOと言えないのよ・・。”
・そこで、彼が目にした100頭を超える牛の墓。そして、狂ったように突進してくる牛や、犬の姿。”川の石は、化学薬品の影響で白いんだ・・”と言うテナントの言葉。
- 川にも、毒が流れているという事は・・。水俣病を連想してしまう・・。-
・所属する企業法務を請け負う、法律事務所のタープ(ティム・ロビンス)の助力も得て、開示請求により山の様に届けられた書類の調査を続けるロブ。そこで、彼は”PFOA"という謎の言葉を見つけるが・・。
- 法廷劇としても一級品の今作だが、描かれている内容は、事実である事に愕然とする。ー
・”PFOA"が”C8"とも呼ばれる人体に悪影響を及ぼす化学物質ペルフルオロオクタン酸である事。デュポン社がその事実を知りながら、自社の利益のために隠蔽してきた事が徐々に明らかになる過程が、恐ろしくも面白い。テフロン加工をしていた女性の3割の人が産んだ子供が奇形児であった事。
”レセプター”と言うデュポン社の書類に有った言葉・・。
- ここまでの事実は知らなかった・・。”企業は人なり”ではないのか!-
・デュポン社で働く人の多い町で、彼の大企業を訴えた事で、白眼視される母親、原告。そして、ロブ自身も結果が出ないので、年収は下がり妻からは厳しい言葉を浴びる。
- 日本で言えば、原発のある町で、選挙時に、賛成派、反対派に真っ二つに分かれる事象が多発する事と同じであろう。
ロブ自身も心が折れそうになる・・。住民に血液検査を頼んで7年。結果は届かない・・。
あれは、辛いよなあ・・。-
・ロブの元に掛かって来た一本の電話。それは、恐ろしい事実を告げるモノだった。
”3535人の住民が、健康被害に遭っている可能性があります・・。”
・ロブは法廷闘争に持ち込むが、強かなデュポン社は、あらゆる手段を使って来る・・。
- ロブの行為に対し、”大企業から金を取るためと思われる・・”と言った若手に対するタープの毅然とした言葉に、痺れる。ー
<重厚で、見応えのある10年以上に亘る、一人の環境弁護士の実録公害訴訟で、巨大企業と戦う姿に感銘を受けた作品。
弁護士の中には、自分の利益しか考えていない輩が偶にいるが、ロブの様に弱者の側に立ち、過酷な状況の中、正義のために戦う気骨ある弁護士の姿には頭が下がる。
今作は、重いテーマを扱うが、ストーリーテリングも良く2時間という時間は全く感じない。
トッド・ヘインズ監督の手腕と、マーク・ラファロの執念が産んだ秀作だと思います。
この優れた映画の公開館が非常に少ない理由も、イロイロと推測をしてしまうが、公開してくれた映画館関係者の方々には、改めて感謝を申し上げたいです。
映画は、文化であり、時の政治にモノ申す民衆の想いを伝える媒体であるだから・・。>
> 私が勤める会社は、毎年、デュポン社の安全コンサル評価を受けていたから
うわお。それは、この映画をめっちゃリアルに観られる、(映画好き的には)素晴らしいポジションですね。お仕事的には、ホント大変だったでしょうね。お察しします。
今晩は!こちらこそいつも有難う御座います!
上映館が絞られてますよね。東京も日比谷シャンテだったので大人向けミニシアターって位置付けでしたね。本当こういう内容は広く観て欲しいですね!!