「【四つの物語】」ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【四つの物語】
デュポンは、この映画の最後の場面の年、つまり2015年にダウと経営統合し、その後、当初予定されていたことではあったが、事業再編のうえで2019年には3社に分割されている。
デュポンとダウは公には否定するが、このテフロンを巡る問題の大きさが窺い知れる措置だった。
訴訟、賠償費用だけではなく、ブランド価値にも大きなダメージを抱える事になったのだ。
この作品は四つの物語で構成されていると思う。
(以下ネタバレ)
一つめは、当然、環境を考えることだ。
二つめは、企業のコーポレートガバナンス。
三つめは、規制を含めた社会の法律システム。
最後は、家族の物語だ。ロブの家族はもちろん、被害者となった人々の家族の困難を考えなくてはならない。また、ロブの妻サラが言うように、孤独だったロブには法律事務所は家族同然だったのだ。
この物語は、20年に及ぶ、被害者と、それをサポートしようと奔走するロブたちの長い戦いの記録だ。
映画「MINAMATA」でも描かれたように、企業は自らの過失を認めようとしない傾向は強い。
もし、政府が規制に関わっていれば、政府も同様だ。
監督官庁はもちろん、企業誘致に関与していれば政治家も同じだ。
こうしたなか、被害者は孤独な闘いを強いられる。
だから、ロブのように寄り添い一緒に闘う人は必要なのだ。
昨今、環境負荷を考えて、規制に先んじたルール作りが企業に求められるようになってきている。
人々の監視が強くなっただけではなく、問題があれば一気にネットで拡散されて、企業イメージに傷が付いてしまうからだ。
言われのない誹謗中傷などのリスクもあるが、ネットの功罪で言えば、功の方だろう。
しかし、より専門的なものや、新しく開発されたものなどは、検証は十分とはいえない。
僕は、いつの頃からだったか、このテフロン問題を知り、テフロン加工の、特に、フライパンは使わないようになった。
映画にも出てくるPFOA(=パーフルオロオクタン酸)の有害性の影響範囲は非常に多種多様で、ガンや肝臓疾患、先天性の発達障害、甲状腺疾患など、とてつもなく多くの病気を引き起こすことが分かってきたからだ。
人々が無知だからではない。
こうした悪影響を隠すから、こうしたことが起こるのだ。
アメリカ人の99%の血液に、分解、排出されないPFOAが見つかっている。
錆び付かず、洗い上がりもキレイなフライパン。
家庭料理の味方だ。
この作品には、2人の被害者が出演している。
もっとも印象に残る人物の明るい演技に目頭が熱くなる気がした。
日本にも、被害者は多くはないから良いのだと思っているのか、隠蔽やデータ改竄はあちこちで問題になってある。
安倍晋三の森友問題は、突然、国が赤木さんの訴えを認め、うやむやにさせまいと多額の賠償金を設定したのにもかかわらず、裁判を一方的に終結させた。賠償金は国民の税金から支払われるのだ。
企業景況感調査や、最近の建設統計データの改ざんもそうだ。
河井夫妻への1億5000万円の支出指示は、安倍晋三がやったのではないのか。
僕には、デュポンの問題も、水俣の問題も、安倍晋三の問題も、根っ子は同じにしか見えない。
こうした作品は、観て、アメリカひどいねで終わるのではなく、身の回りに、類似した問題がないのか、冷静に見渡すための作品のような気がする。
オバマ前々大統領は、8年目、大統領最後の年に、汚染された川の水を使った水道水を飲めるのかと迫られ、少し舐めただけでは終わらせたため、支持率が下がる事態になったことがある。民主党候補のヒラリー氏がトランプに負けた理由の一つだという人もいるくらいだ。
悪徳企業や政治家は悪知恵を働かせて、どんどん賢くなるのに、人々が凡庸なままで良いはずがない。
最後の余計なトピックも含めて、僕は、そんなふうに思う。