「ハードボイルド風というより“固ゆで卵”風。」一度も撃ってません kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ハードボイルド風というより“固ゆで卵”風。
クシャミをしたたけで漏れるような歳である市川進(石橋)。妻(大楠)は教員生活を全うして売れない小説家である夫を支えていた。御前零児というペンネームを使い、サイレント・キラーシリーズを書き続けているが出版には至らない。なぜなら、リアルに殺しの現場を描くものの、ストーリーが全くダメだったからだ。
一流の俳優たちが好き勝手なことをやることで人生の悪あがきを続ける群像は老いを感じさせない。脳腫瘍が見つかったからといって死ぬわけにはいかないのだ。そうやって小説家とヒットマンという二面性を持つ人物像を都市伝説化してまで人生を楽しむこと。老後の楽しみ方をも教えてくれるかのようでした。
都会の片隅にあるバー“y”のマスター、ポパイ(新崎人生)や店の常連・ひかる(桃井かおり)。サマータイムを歌う妖艶さに皆惹かれてしまう。このバーのシーンを見るだけでも酒を飲みたくなってくるけど、彼らの自然な演技がとてもうらやましく思えてしまいます。
ストーリーとしては、市川が色んな暗殺の仕事をリサーチするうちに本物の中国人ヒットマンに狙われてしまうという単純な筋に、日常生活の笑える会話やアドリブをきかした主演者たち。若い観客ならパワハラ問題について語るだろうし、相応の年齢になれば仲間に入れてもらいたくなること必至。
ガンショップ「ドクターノー」、『真夜中の刑事』イブ・モンタン、その他小粋な台詞も豊富でした。「夜は酒がつれてくる」といった決め台詞もいいし、御前零児というペンネームもツボ。まぁ、とにかく高齢者万歳の作品でした。
こんにちわ。いつもお世話さまです。この作品、映画館で1回、配信で1回観ました。雰囲気は大人向けで良かったのですが、石橋蓮司の言葉がかなり聴き取りにくく、俳優としてその滑舌が魅力的かつスモーキー良い雰囲気であるのと裏腹にもうチコっと意識的にハッキリ発音して欲しい気分でした。独り言です。すいません。