「【”9.11以降、CIAはジュネーブ条約第三条を看過し、ビンラディン追求を続けた。”今作は米国CIAの闇にスポットライトを当てた、製作陣の米国を想う意思を感じるポリティカル・サスペンスである。】」ザ・レポート NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”9.11以降、CIAはジュネーブ条約第三条を看過し、ビンラディン追求を続けた。”今作は米国CIAの闇にスポットライトを当てた、製作陣の米国を想う意思を感じるポリティカル・サスペンスである。】
■アメリカ上院職員のダイアン・ファインスタイン(アネット・ベニング)のスタッフ、ダニエル・J・ジョーンズ(アダム・ドライヴァー)は、9.11同時多発テロ事件以後のCIAの拘留・尋問に関するプログラム、EIT(強化尋問法)の調査を命じられる。
 多くの資料を元に6年もの間、調査を進めると、CIAが国民にひた隠しにしていた、アルカイダ一味と【思われた】人々に対するCIAによる残忍な拷問行為の実情が明らかになっていくが、CIAはその事実を表面では認めずに、水面下ではダニエルを上院組織プログラムに侵入したハッカーとして陥れようとしていたのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作は、特に中盤までは脳内フル回転で観るが、実に面白く怖い映画である。
 物語の流れは、ダンがFBI対テロ組織に入った2003年から始まり、ダイアンの指示でCIAが導入した拘留・尋問に関するプログラム、EIT(強化尋問法)調査を始める2007年から2013年までを描いている。
・主人公のダニエル・J・ジョーンズを演じたアダム・ドライヴァーの、抑制した演技が抜群で、只管にCIAの行為を調査し続ける姿が、尊い。彼は地下室の様な場所で少数人数で6年もの間調査を行い、実態に迫って行くのである。
 だが、その途中で報われない仕事と感じ、辞めて行くスタッフも出るのである。
 それでも、ダンは私生活も投げ打って只管に調査を勧めるのである。
・そこで暴かれる、アルカイダ一味と【思われた】人々に対するCIAによる残忍な水攻めや、眠らせないように轟音のロックを流したり、壁に叩きつけるシーンは、劇中でも流れるが「ゼロ・ダーク・サーティ」で描かれた拷問行為に似ている。
 だが、彼の映画では拷問する側も、精神的に参って行き、交代していた事を思い出す。
・ダンの執拗な調査に焦ったCIAは、到頭ダンの調査部屋に夜間侵入し、彼をハッカーとさせる仕掛けをする。ダンが言うように彼は”word”しか使えないのに・・。
<そして、開かれた公聴会。CIAはダンをハッカーとしてスパイ容疑を掛けるが、逆に彼は新聞記者を使い、CIAの妨害行為を記事として掲載してもらい、CIAは起訴を取り下げるのである。
 そして、ダイアン・ファインスタインが皆の前で語った言葉は、実に響くのである。
 【過去の過ちを認めない国は法治国家ではない。アメリカは誤りを認め、法治国家である事を示し、敵が持たない良心を失ってはいけない。】
 今作は米国CIAの闇にスポットライトを当てた、製作陣の米国を想う意思を感じるポリティカル・サスペンスなのである。>
■推論:今作が公開されたのは2019年である。共和党のトランプ政権の第一期である。米国での公開館の少なさ、上映延期、日本での映画館上映の見送りに、何らかの政治的圧力、もしくは配慮が行われたのではないかと、この秀作を観て思った次第である。

 
  