配信開始日 2019年11月29日

「まだ『ゼロ・ダーク・サーティ』を見てないことに気づいた!」ザ・レポート kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5まだ『ゼロ・ダーク・サーティ』を見てないことに気づいた!

2022年1月23日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 THEとREPORTの間に赤塗りされた文字は“TORTURE(拷問)”だ。このタイトルでさえ拷問の文字を排除し、秘密を暴いたのに黒塗りされたレポートといった意図を如実に表すタイトルだ。

 『モーリタニアン黒塗りの記録』(2021)の内容とも被ってくる作品ではありますが、こちらの作品はCIAの記録を調査する上院職員ダン(アダム・ドライバー)を中心とした実話モノ。ほぼ会話劇で進むために、恐怖を味わうような緊迫感よりも政治とCIAの絡みの裏事情がヒシヒシと伝わってくる仕組みとなっていました。SEREプログラムや3Dといった専門用語も登場しますが、要は心理学者が拷問に加担していたこと。拷問への抵抗する教えが逆に拷問利用へと変わっていったことがわかります。cf:ミッチェルとジェッセン

 6年間入室も厳しい調査室で穴蔵生活のような職場に身を置き、真実を暴こうと意気込んでいたダン。関係者の調査などでレポートをまとめていくが、それが7千ページにもなる内容となった。実在の政治家の名前、特にブッシュやオバマ大統領、チェイニー、ラムズフェルド、ライス、アディントン等々がボンボン飛び出してくる面白さがあります。

 キーとなるのは水責めは効果が無いということ。結局はビンラディンとは無関係な者を拷問し、アルカイダやビンラディン殺害に成功したというのも拷問から得た情報ではなかったことも明らかになっていく。そして、強化尋問法も破棄したオバマ大統領でさえ、その審議過程についてはひた隠し。主人公のダンにしても英雄扱いされるか裏切り者の烙印を押されるかの両極端の意見がまた分断の要因になるだろうことも頷けるし、世間に真実を伝えることも諸刃の剣だと訴えてくる。

 反権力といったテーマではないし、真実を明らかにするといったジャーナリズム精神がダンにはあったのだろう。それは共和党、民主党の政策に偏ることなく、超党派での闘いなのだと。さらには三権分立の真意も伝わってくるし、相互に監視し合うことの大切さも訴えてくる。

 それに比べて日本で起きてることと言えば、政権維持のために政治活動したり、私利私欲のために政治をしたりする小悪党ばかりなんだと・・・情けない。まぁ、日本では人権の尊重さえ無くそうとしてるんだからなぁ・・・悲しい。そろそろ敬遠していた『ゼロ・ダーク・サーティ』でも見てみるか。

kossy