「ジョゼとババと恋とライバルと友人と癒し枠」ジョゼと虎と魚たち(2020・アニメ版) なつさんの映画レビュー(感想・評価)
ジョゼとババと恋とライバルと友人と癒し枠
何十年前かもう覚えてない。
原作を読んだ。そして劇場で実写映画で観た。
当時はあまり好きではなかった。本当に印象しか覚えてない。これはちょっと…な感想だった。
先日、この作品の話が出てアニメを観ることを勧められた。絶対良いって!!!って。
そんな彼は「くるり」の大ファンだった。
なるほど、その縁でジョゼか。映画への入り口はどこにでもあるなと思いつつ配信視聴。
え?私の知ってるジョゼではないぞ!
戸惑う。
まず、ツネオがクズでない!ここ、1番大きい。
アニメ版のジョゼは相変わらず捻くれてて、序盤はケツの毛全部抜いてやるかなってくらい生意気だが外の世界を見る表情や感想がいちいち可愛くて、この野郎!って思う。
ジョゼの見る新しい世界は美しい。
でもそれはツネオというカンリニンが一緒だから。
彼がそばにいれば無敵。縋る相手がいるから。
カンリニンがただののほほんと生きてる青年ならジョゼはここまで心を開かなかったのでは。
カンリニンには夢がある。人生をかけた夢。
いつも聞き手に回っていた彼は自分の夢に関しては実に饒舌に語る。
ババが作っていた水槽からカンリニンがジョゼに新しい世界を広げてその外の世界を2人で見るという秘密の共有から少しずつお互いに恋心が生じるという素敵な少女マンガ的世界。
本当にアニメでしかできなかったストーリィだと思う。
決して外に出さず役所の勧めを聞かず、自分の都合でジョゼを扱ったババ(決して愛情が無いのではない)
ジョゼに外の世界と夢を追う姿を見せジョゼの翼となったカンリニン。
恋人でもないのに勝手にライバル視してジョゼの恋に気づかせるマイ。
彼女の夢の世界に誘って現実的な応援してくれる初めての友人のカナ。
そして今作で個人的にいちばんの癒し枠であるハヤト。
カンリニンだけでなくさまざまな人々によってジョゼの世界は広がっていく。独りではなくなった。
しかし赤い風船にも水玉の傘にも届かなかった彼女の手は身代わりになって事故ったツネオにかけよる事もできない。
健常者にはわからない!と言い放ったのに奇しくも彼の翼を折り、自分と同じ障害を持つ身とさせてしまう。
そして、その落とし前をつけるのも自分だと奮起するジョゼ。
身体的ハンデを持つ彼女の武器は絵だけ。
それで彼の心が救われるのか本当にわからない。
伝わらないかもしれない。
わからないけど不器用な自分の持てる全てをぶつける。
ジョゼは迎えに来て欲しいというツネオの信頼を受け入れ、ツネオに縋ることもなく1人で虎と対峙する。
もう負けないと言わんばかりに。
最後、空港でツネオを見送るジョゼの満面な笑顔。
決して不安はない。
彼は彼の夢を、自分は自分の夢を追いかけるのだ。
幸せな恋は人を強くする。
辛い時は連絡しあい、励まし合い少しずつ世界は広がっていく。きっと群れになる。
そして祝福のようにピンクの絨毯を歩む2人。
原作ファンの方は納得いかないかもしれない…うん。
アオハルかよ!みたいな世界だし。
人生の轍の形は人々によって多種多様。
どんな世界を歩むのか。珍しく少女マンガのような考えをしてしまう幸せな気分になれたので、私は好きです。
パラレルワールドジョゼですね。