劇場公開日 2020年12月25日

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「2020年に暴力系ヒロイン!?」ジョゼと虎と魚たち(2020・アニメ版) サブレさんの映画レビュー(感想・評価)

4.02020年に暴力系ヒロイン!?

2020年12月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2020年にもなって見た目麗しい暴力系ヒロインアニメをまさか劇場で観ることができるとは思わなかった。最近は女性も気楽に鑑賞できるアニメ映画も増えてきたので、新しい層への希求として一種の揺り戻しが来たのだろう。

というのは、女性向け妄想作品としての色が強いと感じたからだ。
ヒロインははかなげな美人で、わがまま放題の割には優しく辛抱強く接してくれる男性がそばにいる。芸術の才能もあり障害を抱えているという尊重されるべき存在なのに、「虎」こと無理解で粗野な男性がヒロインの精神をむしばむ(作中の女性は舞以外全員ジョゼの味方)。
さらには優しい男性がヒロインと同じ境遇に陥ってしまい、完全に気持ちをシンクロさせたうえでついにヒロインは優しい男性の心の支えになる。あろうことか恋敵からの叱咤激励まである。

これは男性向けでいえば、転生して超強い能力をゲットして女性に軟派な言動をとっていたらなぜかモテまくってハーレムを築くくらいのご都合主義である。ToLoveる以上。あと、PとJKやスイッチガールもこんな感じだった気がする。

とはいえ、上記のような妄想に胸やけがすることはない。画は美麗で、登場人物にはきちんと血肉が通っている様子が感じられたからだ。
特に、想像の赴くままにジョゼが人魚に姿を変え、空想の海で自在に泳ぐシーンは非常に美しい。そのほかにも、四季の移ろいや恒雄のプレゼントお披露目、そして何より絵本の絵。観る者の嘆息を誘い、くぎ付けにするだろう。それほどに美しい。
暴力系ヒロインに抵抗のない方はぜひ。

サブレ