「今年も最終週ですが、良い作品が出ましたね。」ジョゼと虎と魚たち(2020・アニメ版) yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
今年も最終週ですが、良い作品が出ましたね。
今年62本目。
大阪市在住@重度身障2級持ちの観点からのレビューを。ちょっと変わってるかな?
(なお、内部3級+3級なので車いすではありませんが、多少歩くのがしんどいくらいです)
「魚」が何を指すかは物語でははっきりとしており明らかです。一方、「虎」をどう取るかは難しいところです。ジョゼの外出を阻む外出の邪魔をする、配慮が足りない人たち、配慮のない施設といったわかりやすい概念から、「自分の本当の夢をかなえるときに強敵になって立ちはだかる敵」という解釈もできます(おそらく、複数の意味が同時に存在しそう)。
原作がもう15年くらい前から存在し、今年アニメ化するにあたって(おそらく、コロナ問題で延びてる?)、15年もするといろいろ変わるので、JRや大阪メトロ(旧大阪市営地下鉄)などは2020年時点のものに変わっています。
仲良くなった2人は色々な場所に向かいますが(実在する場所、架空の場所とが混在していますが、まるっきり存在しないものは出てこない)、それらの場所もバリアフリーとはいいがたく(後述)、彼女1人だけで行くのはつらいでしょうね。だからこその「管理人」なのであり、特に重度身障と呼ばれる方の中でも特に配慮を要する、車いすの方への理解がこの映画を通じて広まればな、と思いました。究極を言えば、障がいのある人もない人も共存していける社会の構築、ですね。
※ 中には実在する施設も出てきますが、映画館だからなのか、ライバル企業なのか、「TOHOシネマズ梅田」が「TOKOシネマズ梅田」になっていたのには笑えましたね。
ラストは…。ラストは最後に秘密が混ざっていますので、スタッフロールが終わるまで席を立ってはいけません。
近畿圏の中でも大阪市に在住している方には何の特段の「予習」も不要でしょうが、東京の方だとわかりにくい点もあるので、公式サイトの「映画の中に出てくる大阪市マップ」は見ておくことをお勧めします。
さて、さっそく採点に入りましょう。下記のことから4.5としました。
いずれも細かい点なのですが、どうしてもひっかかってしまいまして。ただ、いずれも軽微なものの積み重ねに過ぎないので、私がいつもつけている5.0評価と本質論は変わらないです。
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減点0.2 … おそらく彼女は福祉上は重度身障(車いすのみで下肢障害で2級以上が確定する)の申請を終えて手帳を持っているはずです。そして、天下茶屋駅(最寄りとなる大阪メトロの駅)から梅田(大阪最大の繁華街)に向かうときに「280円かかる」といっています。これは確かに事実通りです(15年前と今とでは1~5区の料金が違います(消費税アップなど)が、そこは現在の値段に合わせたのでしょう)。
彼女がどこ住まいかは明確に描かれないものの、大阪市在住であれば、大阪メトロ/シティバスの無料乗車券が各区役所で配布されるはずで、大阪市以外であっても手帳提示で半額で乗れます(この場合、140円になり、かつ、同乗介護者も経路が同じ条件なら同じくその値段に割引される)。この点の説明がなく(しかも、どう考えても割引対象者であるのは駅員さんもわかっているのに説明しないの?)、「福祉関係のところをカットしたのかな…?」とは思いました(本質論ではないので)。ただ…
減点0.2 … 彼女がどこ住まいかははっきりしませんが(八尾市にも見える)、確かに重度身障などの方にはケアが必要なので民生委員がやってきて…というのは、まぁ一応は…。私も大阪市に引っ越して手帳を書き換えて(大阪市のものにして)、行政も重度身障の方が誰で、誰にどういうケアが必要でいつ見守りなどに行くのか…といった点は参考にしている…のが建前なハズですが…私、15年くらい住んでますが…。一度も来たことないです…。で、映画内では「さっさと仕事を探せ」だの何だのとしか言わないのですが、それでもまだ来てくれるだけマシで、実際、「2020年現在の状況を考えると」来るものなのでしょうか…(コロナ問題は度外視。いわゆる、個人情報保護法などとの関係っぽい)。
何か、そこは「八尾市でも大阪市でも親切に対応してますよー」って言いたかったのでしょうが、正直見たことも来たこともないです…。というより、2級でさえ来ないならいつ来るの…レベルで、ここは現実と映画の描写が乖離しちゃってますね…。
※ かつ、彼女が一番落ち込んでいる時(ネタバレ回避のため詳細省略)にやってきて、「仕事を探せ」だ何だの言うのも…まぁ、「最終最後は自立」が目標なのでそうなるのは当然のことですが、それを「一番落ち込んでいることが明白な、「ある出来事」が起きた数日?後」にやってきてやる行政も何なの…というのもちぐはぐかなぁ…とは思いました(もちろん、現実であれば、今回と同じようなケースなら、民生委員がやってきても、実際には今日の明日のに仕事を探せだの、無理難題を何だのいうわけがない)
減点0.1 … 物語の序盤に、天下茶屋から梅田まで出かけるシーンがあります。実はこれは一本では行けず、必ず乗り換えを必要とします。一番わかりやすい乗り換えは、天下茶屋→動物園前(堺筋線→御堂筋線)→梅田 なのですが、動物園前駅は乗り換え移動が大変と言われる駅の代表例です(とにかく段差が多い、移動距離がやたらに多い上に、御堂筋線の行き先によって乗るエスカレーター・エレベーター(彼女の場合、エレベーターでしょうね)が全部違い、1つでも間違えるとまた戻ってやり直しという結構面倒な駅だったりします。
もう1つの可能性は、天下茶屋→南森町(堺筋線→谷町線)→東梅田 ですが(東梅田からJR大阪駅までは「徒歩で」10分くらい)、この南森町も谷町線との乗換駅な上にJRに接続している関係上、かなり混みます(車いすでの移動は結構難しい)。
このあたりはどうでもいい話ですが、大阪メトロ(旧大阪市営地下鉄)もタイアップ…というのなら、その「乗り換えのときの介護」などの描写はあっても良かったのかな、と思います(単に乗車して、降りてではなく、どうしても乗り換えが必要な「お客さん」なので)。
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そうですね…。繰り返しになりますが、「虎」の解釈を狭く「交通弱者に対して襲い掛かってくるもの」「移動の邪魔をするもの」ととらえるのなら、こうした乖離している部分はどうしても減点材料にせざるを得ませんでした(この辺、大阪メトロとタイアップしているなら、そういう割引があるとか何とか触れなくていいとか向こうも意見出さなかったの?