「外には色んなことが待っているけど」ジョゼと虎と魚たち(2020・アニメ版) KZKさんの映画レビュー(感想・評価)
外には色んなことが待っているけど
東京国際映画際にて鑑賞。とても美しくそして優しく、最後は心温まる作品でありまさに映画祭に相応しい最高な作品であった。
実写化の映画は未見である。その実写化作品も15年以上前になるという。原作は30年以上前となりそれでも尚今でも楽しめる作品なのだからとても素晴らしい作品である。
主人公のジョゼは車椅子の生活を送る。故に家に引きこもりがちで、自分の心を傷つくことを恐れ汚い言葉を発したり攻撃的な性格である。
そんなある日大学生の恒夫にブレーキが効かず事故に遭いそうな所を助けられる。これが彼らの出会いの始まりである。
両親は亡くなっているため祖母と暮らすジョゼだが、祖母の機転でアルバイトでジョゼの世話をする事になった恒夫。当初は恒夫に攻撃的で心を閉ざしていたが、時間を共にする事で心を開き両者共に心を惹かれあう。
外に出る事で新しい発見や喜びをみつけ、幸せな日々を送っていたが苦難にもぶつかる。恒夫の留学の問題、車椅子で生活を送るにはまだまだ不自由や社会、そして恒夫の事故。いいことばかりではないのもまた外の世界である。
そんな壁を信じる事、助け合う事で2人で乗り越えて最後は2人は結ばれ各々の夢に向かって突き進む姿で作品は終わる。
この作品を見る前は車椅子という部分になにか特別なフォーカスが当たり話が展開されていくと思ったがそういった印象は受けなかった。
この作品においてはジョゼは車椅子というハンディがあるが故に外の世界に溶け込む事を恐れ拒み内向的になってしまってるが、それは決して車椅子というハンディがある人だけではない。誰しもなにかしらの恐怖心はあるであろう。
もちろん恐怖心から内向的になる事で外との接点を減らせば守られることも多いだろう。ただそれでは新しい発見や喜び、幸せを得られる機会が大きく失ってしまう。
もちろん外に出れば時には、危険なことや傷つく事もあるだろう。ただそれ以上に大切な出会いや幸せが待っているのもまた事実であろう。
この作品でいえばジョゼは外に出る事で恒夫と出会い、色んな場所に行く事で新しい友達もでき、自分の夢に進む勇気を得た。そして人に頼る勇気、人を愛する勇気も得た。
恒夫またジョゼとはケースは違えど、バイト三昧で夢を追う事に囚われ彼の世界が狭まっていた。
ジョゼと出会い恋をする事で彼の心にある大きな翼を持っている事に気づかされ大きな自信を育む事ができた。
辛い事もあるが、それ以上に幸せな事もある。ありきたりだけど、この作品はそれをストレートに描いてくれるのがとても魅力的である。
そしてジョゼと恒夫の恋愛描写がとてもピュアである。
舞台挨拶の際に恒夫役の中川大志さんが語ってたが、ジョゼが徐々に心開いていく姿がとても魅力的であり、とても心躍らさせられる。
恋愛作品においては若干ありきたり感はあるものの、ストレート且つピュアな恋愛はやはり良いものだ。
とてもいい時間を過ごす事ができた。