「問題なのはキモさと金がかかること」星の子 とびこがれさんの映画レビュー(感想・評価)
問題なのはキモさと金がかかること
広告やポスター事前に知ってたのに、始まった瞬間「あれ?実写?」と思いました。おそらくですが「バケモノの子」「天気の子」と並ぶ系譜だと勝手に勘違いしていたようです、すみません。
いいカルトモノでした。
人間は心と体が密接ですから、両親は頭に水を垂らさなくなったら本当に病気になるんです。だから自分でそれを実行することを、端から見て狂ってると吐き捨てた数学教師は未熟。その未熟さを抱えた人は大半と思いますが。ただ両親はちひろちゃんにも水をかけようとした。あれは「やってみる?落ち着くよ?」と提案するのはいいが無理にかけたらカルトですね。
クマのぬいぐるみを抱いていないと眠れないの、に対して、なくても眠れるよなんの根拠もない気持ち悪いからやめてくれ、とは誰も言わないと思います。頭に水垂らすのと何が違うのか。
①形式の不気味さ②大勢が同じことをしている③過剰に金を使っている。④行為への依存度が高すぎる、あたりでしょうか、まあいいです。
この映画を通してカルトを論じる、という形でなく、ここでは映画としての感想を書くべきでした。スレ違いというやつ。
芦田愛菜ちゃんの演技は別格でしたね。カルト信者や家族はある種無意識の領域に楔がうちこまれ(徐々に醸成され)ていて、外部からの刺激等で矛盾を認める結論に行き着きそうな、思考をはじめると楔のブレーキがかかるんですよね。それは感情の動きとかとは別の脳の動きだと思いますが、それを芦田愛菜ちゃんは演じきってる。芦田愛菜ちゃんすごすぎる。
しかし最後いきなり終わりました。ちひろちゃんや両親が何らかの転機を迎えることはついになかった。たしか「HATE U GIVE」を観たときも思いました、これは人種差別の話ですが、社会問題がど真ん中にある映画はオチ(解決)を示せませんね。現実で誰も示せていないですからね。
観た人にスッパリ観終わらせてくれず、ずるずると映画内容を思考してしまう。制作者の思惑通りだ。