「相互理解、相互信頼、ワンチーム」ヒノマルソウル 舞台裏の英雄たち みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
相互理解、相互信頼、ワンチーム
今作は、1998年冬季五輪長野大会スキージャンプ団体で日本が金メダルを獲得した影で、奮闘したテストジャンパー達の姿を描いた作品である。コロナ禍の東京五輪を巡って、日本中が騒然としている時期に、今作の様な、捻りの少ないストレートな作品を観ると、当時のことが自然に蘇ってくる。五輪に賭けるアスリート達の熱情に純粋に感動できる。スポーツの持つ力に圧倒される。
今作の主人公は、1994年冬季五輪・リレハンメル大会団体で金メダルを逃して銀メダルに甘んじたメンバーである西方仁也(田中圭)。彼は、4年後の長野大会を目指して練習に励むが、怪我をして長野大会のメンバーから外される。そして、葛藤の末にテストジャンパーを引き受ける。主人公を含めテストジャンパー達は様々な事情を抱えていた。最初はバラバラだったが次第に絆を深めていく。そして、長野大会本番を迎える・・・。
前半は、西方を中心にして物語が進んでいく。メンバーのミスで金メダルを逃したことへの屈折した思い、長野大会メンバー落選のやり場のない怒りと絶望、テストジャンパーの役割を見出せない苛立ち等々、西方役に庶民的な田中圭を起用したことで、彼の苦悩を選ばれた者のものではなく、等身大に捉えることができる。共有できる。親近感が持てる。
後半は、テストジャンパー達の群像劇である。女性ジャンパーの小林賀子(小坂菜緒)、障がい者の高橋竜二(山田裕貴)、主人公同様に五輪メンバーから外された南川崇(眞栄田郷敦)など、主要な人物像が明確で分かり易い。彼らは、共同生活をしながら、時としてぶつかり合いながらも次第にチームとして成長していく。クライマックスシーンでは、一致団結して果敢に戦っていく。
彼らは個々のスキルは高くはない。しかし、相互理解、相互信頼ができるワンチームに昇華したことで、金メダルという栄光の影の立役者になれたのである。
相互理解、相互信頼、ワンチーム、という言葉が心に刻まれる作品である。