劇場公開日 2020年3月14日

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「きれいな映画を楽しみながら、「共生」 について理解することができます!(2)」ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方 CBさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0きれいな映画を楽しみながら、「共生」 について理解することができます!(2)

2020年12月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

さすが、キネカ大森! 「ビッグリトルファーム」 と 「ハニーランド」。この組合せ、最高!!!!
共に、"共生" の物語。一方は、農業で荒れ果てた土地を、生物多様性のある土地に再生しようとする人々の物語であり(「ビッグリトルファーム」)、もう一方は、北マケドニアの厳しい自然から、自らのわずかな取り分だけをいただいて生きるひとりの女性の物語である(「ハニーランド」)。

こちらは、長年の単作農法という "人為的な" 作業によって荒れ果ててしまった土地を、7年という年月も金も人もかけて植物(作物)も様々に作るし、それだけでなく多くの動物をそこで飼うことによって、生物多様性を復活させる。それができれば、多様性のバランスをわすかにコントロールするだけで、作物の収量を最大化することができるはず、というひとつの理想に取り組む。
書くと、小難しくなってしまうが、とにかく一度観ることをお勧めします。"生物多様性" という、最近時折聞くようになった言葉がどんな意味なのか、映画をみればなんとなくですが入ってくると思います。観ると、ミミズにも触れるようになるんじゃないかな。観ても、ウジ虫はちょっとやだな。

実際、7年めに、農場の生物(動植物)に対して、意図してやっていることは、「コヨーテが鶏を食わないように、犬に守らせている」 ということだけであろう。それ以外は、7年間で作り上げてきたバランスに任せている。コヨーテも、鶏が食えなければ、ホリネズミ(モグラみたいな動物で、増えると農作物が被害を受ける)を食って、その繁殖を妨げる。
「こうしたバランスがとれた世界(農場)を作り上げれば、そこで行う農業は、(農薬は不要だし)思ったほど大変ではない」 と人々に説いて信じさせるアランさん(故人)はもちろんすごいし、その言葉を信じて、アランさん亡き後まで継続し続けて実現して見せた、主人公ふたりを中心とした協力者たち全員もまた、すごいと思う。「百聞は一見に如かず」 だし、その "一見" を実現してみせたことが、この上なく偉大。そして、それを、本作のドキュメンタリー映画として、後世に残せたことは、人類の資産のひとつだと感じる。

かたいことばかり書いたけど、映画は、軽妙だし、映像はきれいだし、絶対に肩ひじ張らずに観られます。そして、楽しく観終わってからしばらくたって、作者が伝えたかったことが腑に落ちる、そんなタイプの映画だと思う。とても、好きです。

人間が壊してしまった土地も、悪意があったわけではなく、より豊かな暮らしをしたいと思った結果なわけなので、"未熟だった" だけなんだと感じることが大切と思う。善か悪か、ではなく、自然との共生にむけて進歩していく道を、私たちはこうやって進んでいるのだと思う。

冒頭に書いたように、この映画 「ビッグリトルファーム」 で 「壊してしまった自然を、共生できる姿に再び戻す姿」 を観たら、 「ハニーランド」 で 「すでにある自然と共生する姿」 を観ることを、強くお勧めします。

CB
bloodtrailさんのコメント
2020年12月25日

CBさんへ
今夜から仕事を忘れて、劇場通い再開予定のbloodです。
ハニーランドとビッグ・リトル・ファームの取り合わせは、確かにセンス有りすぎですね! 私は別々に見たので対比は思いつきませんでした。
「共生を破壊することで引きおこされる涸渇」と「共生を再生することで得られる豊穣」ですね。確かに、続けて観ると面白いと思います!

bloodtrail