「人間模様を繊細に描写」どうにかなる日々 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
人間模様を繊細に描写
音にはじまり、音に終わる作品だった。黒い画に色とりどりの点線のようなものが映されて、そこに町の環境音や人々の会話が聞こえる。エンドクレジットが終わったあとにも黒味に街の環境音だった。本作は、前編とても良い音がした。野菜炒めを炒める音がものすごく美味しそうに聞こえたりする。フォトリアルではない背景にシンプルな線のキャラクターが良く馴染んでいる。リアリティは映像世界全体の調和から生まれる。本作は見事に調和していた。
物語は4篇のオムニバス。女同士や男同士の淡い恋に、少年と少女の性の目覚めの瞬間などが描かれる。日常をスナップショット的に切り取ったようなささいなエピソードに、血の通った人間味が細やかに描写されている。こういうじっくりと人間と見つめた作品をアニメで作れるのは、日本アニメと漫画の豊かな点だ。生活感のあるアニメは高畑監督が追求した日本アニメの美点のひとつ。こういう作品にも注目があつまってほしい。
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