「善も悪もない争いだけの終末と本物の愛」FREAKS フリークス 能力者たち つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
善も悪もない争いだけの終末と本物の愛
後半は間違いなく面白かったと言えるが、前半は面白いんだかつまらないんだか分からない不思議な作品だった。
父親が娘を自宅に閉じ込め、外に出たときのトレーニングをしているという始まりだ。
事前知識があればフリークス狩りをしている外の世界で回りの目を欺くための訓練とわかるが、この段階では前後関係とかがわからず少々退屈に感じたような。
しかし時折挟まれる「ん?何だ?」というシーンのせいで面白く感じる瞬間もあり、サスペンスかスリラーかのような作風も相まって、面白いの?面白くないの?と自問してしまう不思議さ。
基本的には「Xメン」の焼き増し、スピンオフ、前日譚、後日談のような、特殊な力を持つ人間と力を持たない人間の対立ものなのだが、見終わって振り返ってみると、スリラー風なこともありなかなかディープな内容で、ディストピア世界のホラーだったとも思える。
フリークスを見分ける方法が作品内では目から血を流すことだけだが、フリークスを取り締まる特殊警察のような人たちが、目から血を流しているという理由で録に確認もせず射殺する場面がある。
これは、遡れば、主人公の母親たちがフリークスが収容されている山を爆破しようとしたことが原因で、その前には山でのフリークスに対する不当な扱いに対する怒りがあり、更にその前には、フリークスを恐れた人間によるフリークスの隔離収容の強行がある。
「Xメン」はスーパーヒーローもので、シンプルな娯楽系であるため収容するかしないかの段階で物語が構成されているのに対し、もっと進んだ、力を持つフリークスと力を持たない人間が完全に対立しているのだ。
ここから見えてくるのは、力を持たない人間から見たフリークスは自分に害をなすかもしれない猛獣と同じで、フリークスから見た力を持たない人間もまた同じだということ。
つまり、もう既に同じ人間としてお互いを見ていない末期感に溢れている。
しかし観ている私たちには同じ人間なわけで、どっちに誰に肩入れすべきか困惑する。
何となく主人公目線で観るわけだが、人間もフリークスも罪なき人をあっさり殺しちゃうんだから複雑だよ。
激しい争いがあるが、悪人と呼べる人はいなく、逆に正義を掲げる人もいない。善も悪も存在しないのに争いだけが存在している。
その中で、外の世界を知らない主人公が求め続けた母親、家族からの愛、それらの本物を見つけ気付き、と同時にフリークスとして覚醒する様を描いていく。
頭で考える形だけの愛、言葉だけの愛から、本物の愛を知る展開は面白かったね。
いろいろ盛り込まれていて単純なアクションものとはちょっと違うけど、面白かったところはそれぞれが力を使って目的を果たそうとする、いわゆる「戦い」のところだったわけで、やっぱり面白かったんだかつまんなかったんだかよくわからない作品だったな。
