劇場公開日 2021年8月20日

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「「水は海に向かって流れる」実写化と見比べると、良さが一層引き立つ」子供はわかってあげない 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「水は海に向かって流れる」実写化と見比べると、良さが一層引き立つ

2023年6月11日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

楽しい

幸せ

本作を公開当時見逃して残念に思っていたが、田島列島の人気コミックの実写映画化という点で共通する「水は海に向かって流れる」(2023年6月公開)を観るにあたり参考のため配信で鑑賞。「南極料理人」「横道世之介」など大好きな作品の多い沖田修一監督、やはり期待を裏切らず楽しませてくれる。冒頭前触れなく始まって観客を面食らわせる劇中アニメへの尋常ならざる力の入れようなどは、「おらおらでひとりいぐも」の遊び心を想起させると同時に、やはり人気コミックを原作とした石井裕也監督作「町田くんの世界」(町田くんを演じた細田佳央太が本作の主人公の一人・門司くん役)にも似た、邦画界で量産される青春漫画実写化作品の定型を作家性で打破する強い意志を感じさせもする。

上白石萌歌がちゃんと高校の水泳部員に見えるすっぴん(に見えるナチュラルメイクかもしれないが)で、しっかり日焼けしながらプールや海で演じているのも高ポイント(インタビューによると、きちんと夏に順撮りしたという)。そうしたリアルな若者像を丁寧に映像化した点も魅力になっている本作と見比べると、「水は海に向かって流れる」で描かれる世界は表面的でどうにも嘘っぽく、量産型の青春ドラマ邦画の枠を抜け出せていないと感じる。田島列島原作の映画2作品で比較するなら、この「子供はわかってあげない」に軍配を上げたい。

高森 郁哉
ぱんちょさんのコメント
2023年6月11日

いやほんとその通り。違いが引き立っちゃいましたね。

ぱんちょ