ファーストラヴのレビュー・感想・評価
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女性の叫びのような
これは理不尽な暴力や無遠慮な視線にさらされることを我慢してきた女性の叫びを凝縮した映画なんだと思った。女性の大半が多かれ少なかれ、大なり小なり味わってきた嫌悪感だと思う。男子大学生が罪の意識を持ってないところが象徴的。そしてどっちの母親も気持ち悪い。同じ女だからこその気持ち悪さ。でもこのお母さんたちにも同情できないわけではない。
我聞さんのような人がいたら環菜ちゃんも救われただろうな、と思う。裁判での10年越しの謝罪は彼女がようやく救われた瞬間だったのかな。救われるのに10年もかかってしまったことは悲しいけど。
だいぶ削ぎ落としているハズなのでいつか小説も読んでみようと思うんだけど無意識に受け流してきたモノを思い出すことにもなりそうなのでちょっと怖いような気もする。
心の深い傷と闇に迫る映画
誰もがきっと、
人には言えない深い傷や闇がある。
これ以上傷つかないように、
自分で心に蓋をして、
偽りの自分を演じて。
芳根京子さんの演技は凄まじかった。
自分でも知らなかった自分。
過去に置いてきた自分。
それを調べられてえぐり出されるのは、やはりいい気はしない。
それがいくら自分を信じて、自分の闇に気付いて救い出そうとしてくれているとしても。
そしてこれは事件なので裁判で証言しないといけない。
辛くて過酷な試練である。
その過去に向き合い、乗り越えていく。
最後には光が見えて救われるのはよかった。
自分と重ねて涙が止まらなかった。
北川景子さん、中村倫也さん演じる由紀と迦葉もまた、過去に囚われていた。二人は大学生の時に付き合っていたが、由紀はあることをきっかけに離れていく。義理の姉と弟になっても、お互いどこか気にしているところがあり、中村くんの視線にドキッとさせらた。
そして過去、自分を捨てた母の愛を女性にそうやって求めているんだと由紀に言われて怒る迦葉、夫である我聞には、父への嫌悪感や迦葉とのことなど心のうちを明かせないでいる由紀、その後ろめたさ、そしてなんとなくそれに気づきながらも黙って見守る我聞。
一方、芳根さんの演じる環奈をモデルにデッサンしていた大学生もまた、過去の過ちを蓋をして生きてきた。結婚して一人娘の親になった今だからこそ、自分の犯した罪の罪悪感を抱き、環奈の過去を知る一人として、裁判の証人に立つことを決意する。
それにより環奈の心も救われていくところはとてもよかった。
初日の舞台挨拶中継も拝見。
重いテーマであり、親子、夫婦、友達、恋人…さまざまな関係性の中で、本当は庇いたいのに冷たく突き放す演技をしなくてはならないこととか、大変だったと思います。でもとても良い関係性があって、まとまってる感じがしてよかった。
見終わった後とは言えネタバレしまくりなのが笑えてしまった。板尾さんの、あれはトイレの清掃が一番悪いんだ、というのは特に面白かった。
窪塚くんも久々に見れて嬉しかった。窪塚くん、中村くんの声はほんと好きだわ。
寄り添うために必要な想像力
比較的安定した〝普通〟の環境で育つことのできた者にとっては、たぶん、生まれてきただけで無条件に注いでもらえるはずだと思っているのが〝親からの愛〟(ファーストラヴ)。
正直言って、そのことがありがたいことだと感謝したり、自分がどれだけ幸運だったのかなどと思う機会は、日常生活の中では滅多に無くて、自分が親になった時とか、家庭環境の幸運に恵まれなかった友人に出会ったりした時くらいにしか感じることはできません。
それに加えて、幼少期からの性的な圧迫感。
聖山環菜の動機にはどうしても想像力が及ばない。
特に男性には。
ということがあると思います。
だから、想像力を広く喚起する語り部としての映画や文学が必要なのですね、きっと。
今作で、一番期待してたのは、芳根京子さん。
『累(かさね)』『心が叫びたがっているんだ』と文字通り、実績と高評価を累ねてきましたが、表情だけで語ってくる演技は相変わらず〝可憐なのに鬼気迫る〟ものがありました。
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