「キャストの魅力が輝く力作~1番おいしかったのは窪塚洋介?」ファーストラヴ LittleTitanさんの映画レビュー(感想・評価)
キャストの魅力が輝く力作~1番おいしかったのは窪塚洋介?
公開初日、舞台挨拶中継付き上映を鑑賞しました。
かなり濃密な映画でした。
宣伝でミステリと謳っていなかったので、無駄な粗探しに煩わせられず、人間ドラマを堪能できました。
聖山環菜が語らない真実こそが映画の主軸ではあるのですが、それ以上にキャストの演技が光る映画でした。
以下、主要キャスト毎に、その魅力をネタバレせぬよう、述べたいと思います。
①あらゆる場面で魅了的な北川景子(真壁由紀)
悦びから苦悩まで様々な表情を見せますが、そのいずれもが美しい。
特に大学時代の回想で魅せる初々しさは出色。
自分が男だからか、真壁由紀のトラウマを完全には理解しきれてない気もするのですが、北川姐さんの表情で、抱えているものの深刻さは伝わりました。
とのかく、北川ファンなら見逃したら損な作品です。
②らしさ爆発、中村倫也(庵野迦葉)
自分は男のせいか、イケメン俳優に特別興味はありません。
ただ彼の「半分、青い」や「凪のお暇」における、ゆるふわ男子ぶりは秀逸。
本作でも、学生時代の回想で、その一端を覗かせます。
ただ本作でのメインは、やり手弁護士・庵野迦葉の顔。
序盤、ヒロイン由紀に対して当たりが強いのですが、それが自身のトラウマが産んだ新たなトラウマのせいだと解るシーンは見もの。
本作で自分が一番共感したのは、迦葉が由紀に対して抱えていた「悔い」です。
由紀とぶつかる場面でも、その想いがそこはかとなく醸し出されていて、魅力的です。
得意な人もいるけど、やっぱ女友達作るのって、難しいですよね。
③法廷での表情が圧巻な芳根京子(聖山環菜)
自分は「表参道高校合唱部」以来、追っかけてきた芳根フリークです。
彼女が感情を聴衆に伝播させる力は、何度も体感しています。
今回も、法廷での表情は圧巻。
予告動画に対して、表情が怖いとの感想もありましたが、本編を観ると印象は逆転します。
信じられる者がいない環菜の戸惑いと、哀しみと開放が、見事に体現されています。
意外と出演時間は限られているのですが、存在感は抜群。
何かしらの映画祭で、助演女優賞に輝いて欲しい一品です。
④"何もしない" 窪塚洋介の包容力(真壁我聞)
完成披露会見で、窪塚さん自身が「余計なことは何もするな」と監督に釘をさされたと、語っていたのが印象的。
実際、演じた真壁我聞は、静かで物腰の柔らかい男性。
若い頃、窪塚洋介が放っていた尖りやエキセントリックさは、完全封印。
演技の上でも、ストーリー上も、本当に余計なことは何もしない。
だからこそ放つ、無限の包容力。
由紀にっとても、迦葉にとっても、全てを受け入れ、背中を押してくれる存在。
ラスト近くのあるシーンも手伝って、結局我聞が全部持っていったような印象も受けました。
窪塚さんの魅力は勿論、何もさせなかった堤監督の勝利かもしれません。