「火サス並み」無垢なる証人 歯車農場さんの映画レビュー(感想・評価)
火サス並み
火曜サスペンスを2時間にしたような内容と言って良いと思います。分かりやすい人情派弁護師、社会悪を絵に描いたような上司、障害者と関わる上での心得などちょっと良いメッセージ等。
でもドラマなら許容できても映画では許されないような事はよくあります。この映画の場合、弁護士が担当の被告を自分の正義感のために法廷で陥れるますが、それってどうなんでしょう?しかも弁護士が裁判所で被告に「自白すると減刑されます」と言って自白を迫るのはおかしな状況ですよね。退廷させられた上司の方が正常です。ああいうのは裁判所の外で警察とやるべきでオイオイと言わざるを得ないです。
「いい事」や「正義感」のためなら職業規定・倫理も曲げるような情緒優先的な司法なんて怖いですよ。全然共感出来なかったです。
理想と理念を金の槍のように誇って社会に立ち向かうのを是とするような人達にとってはこれでいいのかもしれませんが、なんとも釈然としません。
こんなのが本当に「いい人」でしょうか?
勘違いして突っ走ったら何でもやりそうな、1番怖いタイプだなとしか思わなかったです。
男女が2人揃って社会の悪者のせいで弾かれたけど愛が芽生えたからハッピーエンド!...これでいいのか?
地に足が着いてない感じがずっと拭えなかったです。これが20代前半の新米とかならまぁまだいいですが、2人とも中年でしかも子供までいるとなっては...。
映画全体が386世代とか日本の学生運動みたいな感覚をずっと引きずっているような感じがして何とも言えないです。
『殺人の追憶』や『母なる証明』、『トガニ』など韓国映画にはしばしば障害者が「物言わぬ証人・目撃者」、核心を握るスパイスとして登場しますが、この映画もそれ。でも特殊能力を持った障害者というのは批判も肯定も許さない、まぁ中にはそういう人もいるだろうから...という感じで扱いが難しいですね。真新しい感じは無かったです。演技はとても良かったです。