大仏廻国 The Great Buddha Arrivalのレビュー・感想・評価
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大仏様は怪獣では無いので、ただ茫然と歩き回るだけ
昭和初期に作られた名古屋聚楽園の大仏が動き出すという特撮映画「大仏廻国・中京編」への横川寛人監督のリスペクトからクラウドファンディングで150万円弱、製作費300万円でリメイクっぽく作られた自主製作映画。
初代ゴジラの主役を務めた宝田明さんをはじめ、「マタンゴ」の久保明さん、「ガメラ」シリーズの螢雪次朗さんらが縁ある特撮映画の開祖とも言える作品のリメイクと言うことで賛同し参加、特に宝田さんはカメオ出演でゴジラをはじめ特撮映画は科学の発達が起こす弊害への警告だと、その意義の大きさを熱っぽく語っていましたね。
ストーリー的には「大仏廻国・中京編」を撮った枝正義郎は、本当に歩く大仏を見た事があり、それを映画にしたのだというミステリー仕立て、それを特番にしようと取材を行うTV局の下請けディレクター村田だったが後半には牛久大仏が動き出すという特撮映画に変貌、確かに大仏様は怪獣では無いので、ただ茫然と歩き回るだけで都市を破壊したりするシーンはありません。原作が、戦争による緊張状態、三原山自殺事件などから大仏が動き出したのは人類への警告とした背景が今日にも通ずると考え今回の復活企画が立ち上がったそうです。
8世紀平城京、奈良の大仏の金メッキは水銀を用いたアマルガム製法で作られ、水銀の過熱蒸発作業で多くの職人が中毒死、隠蔽の為秘密裏に埋められたそうですから、奈良の大仏が主役の方が警告というコンセプトにはふさわしい気もしました・・。
明らかな脚本の練り込み不足
本作は実在した1934年の特撮映画『大仏廻国』を現代に蘇らせる名目でリメイクしたものです。
映画が始まると初代ゴジラの主役を演じた宝田明さんや、平成ガメラシリーズ3作全てに登場した螢雪次朗さんなどが登場して凄くワクワクします。
…しかし、この映画の見どころはそこだけで明らかな脚本の練り込み不足です。
出て下さった俳優さんたちに失礼なぐらいです。
元になった『大仏廻国』という映画のフィルムは第二次世界大戦で消滅。紙の資料もほとんど残っていないため、それを再現しようとするスタッフを主人公においたのはいいでしょう。「資料が残ってないのなら再現できないよー」と悩むスタッフをそのまま映像に入れるのも楽屋ネタみたいで楽しかったです。
しかしそれ以上の楽しみがありません。脚本を練ってないからです。
この映画の最大の魅力である「動かないはずの大仏が立ち上がり街を歩く」という部分も説明なく突然動くので物語上のカタルシスもありません。
いろいろ批判的なことを書きましたが般若心経などをモチーフにした音楽は素晴らしかったです。映像とも合っていました。
好感がもてる
『特撮映画が撮りたい!』っていう勢いで撮って公開して、好きな人が観て楽しんでるっていうのに好感を持つのね。そこが良かった。
あと音楽がすごくいいの。「ぎゃーてい ぎゃーてい はらぎゃーてい はらそわぎゃーてい ぼじそわか」を繰り返すのは特に好きだった。「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前」もあったよ。
サントラにまとめて出してほしい。CD-Rに焼き付けただけのやっすいやつで3,000円ぐらいとってもいいから。そしたら買う。それが次の映画の制作費の足しになるなら一石二鳥。
脚本は、公募したらいいんじゃないかと思ったの。本作は「かつて《大仏廻国》という特撮映画があったけど、戦災で焼かれてフィルムは残っておらず」という話から、なんとなくドキュメンタリータッチで展開するんだけど、どうでもいいというか、観てて退屈しちゃうのね。
特撮つくるのが好きな人は「こういう画がみたい」だけでやるから、ストーリーとか、登場人物の感情の動きとか、どうでもいいんだろうなって気がしたの。特撮マニア同士でやるんなら、それでいいと思うけど、一般の人に観せようとするなら、もうちょっと気を使ってもいいんじゃないかな。
特技監督だけがいて、監督がいない感じなのね。
「こういう画を撮りたいから、それを含めて脚本あげて」ってやれば、面白い脚本を書ける人はいっぱいいると思うよ。
それでも、スタッフも演者もやりたいことをやり切った感じで、作品のできどうこうじゃなくて、清々しさはあって良かったよ。
LOVE ME TENGAは煩悩です。
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