「中盤まではよく出来ているのだが」カウントダウン 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
中盤まではよく出来ているのだが
筒井康隆の小説で真っ昼間の会社に金棒を持った鬼が突然やってくるという作品がある。一度しか読んでいないが、強烈な印象がずっと残っている。鬼はとにかく理不尽で、何の説明もなく社員たちを次々に殺していく。筒井康隆らしく死を前にして醜態をさらけ出す人間たちを笑う作品だが、殺され方はリアルで残虐で、やはり理不尽である。ホラーは小説でも映画でも、理不尽さが大切なのだ。
本作品も中盤までは理不尽な展開であり、怖いことは怖い。スマホのアプリをタイトルにしたのもいい。しかし途中から「専門家」である神父が指摘したとおり、これは「呪い」であるということになる。つまり理不尽でなくなるのだ。
「13日の金曜日」や「リング」は最後の最後まで理不尽な状況が続く作品で、続編が製作された。ジェイソンも貞子も鬼と同じように無尽蔵の強さを持っている。映画が完結しなければ物語が現実まで追いかけてくる。だから怖いのだ。本当に恐ろしいホラー映画は、観終わったあとも、ふとしたときに恐怖が蘇ってくるものである。
役者陣は意外によかったと思う。主人公のクインよりも、最初に殺される少女が最も印象に残っている。もしかしたらこの作品のピークはその場面だったのかもしれない。
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