「本当の気○いの人は映画とか撮っちゃダメ」ライトハウス あああさんの映画レビュー(感想・評価)
本当の気○いの人は映画とか撮っちゃダメ
決して万人にオススメできる作品ではないです。終演後にパンフレットを買う列ができているのを見て、正気か?と目を疑いました。
映画は、閉ざされた環境で自由を奪われた人間が次第に狂っていくのを観客みんなで見守る、そんな作品でした。
絶海の孤島に立つ灯台を守る二人の灯台守。一人はベテランの老人で、もう一人は今回が初仕事のド素人の若者。私の人生では、これまで灯台守であったことがないので、自然と新人の若者側に感情移入させられてしまう。
初めての二人の食事で若者は酒を断る。これで二人の関係は船出から危なっかしい。他に誰ひとりいない島での生活を、二人はしばらくお互い名前すら名乗らずに過ごす。
ベテラン役のウィレム・デフォーが、また、これでもかと偏屈でズルい爺いを演じ、理不尽なまでにきつい仕事ばかりを若者に命じる。時には非合理な理由で若者を罵ったりもするから、観客は自然と若手への肩入れが強まっていく。
そんな関係の二人をまとめて一気に地獄へ突き落とすのは、とてつもなく荒々しく、すべてを容赦なく叩き潰す嵐。その恐怖は我々が知っている陸のものとは桁が違う。嵐によって助け合うしかなくなった二人の関係は少しずつ良くなっていく様だが、若者には時々見えてはいけないものが見えてしまっているのではないか?と映画を見ている私達に疑いが生じ始め、果たして何が真実なのか次第に客席に戸惑いが広がっていく。この頃には少し若者に肩入れし過ぎたかな?と立ち位置を修正しながらことの成り行きを眺めはじめる人も増えているだろう…
映画は始終不快な唸り声の様な音が鳴り響いているけど、まさかこれがBGMなのか?きっとサントラは売れないだろうな。ほぼ正方形のスクリーンは何サイズと呼ぶのか知りませんが、モノクロ映像のせいか、映像と暗闇の境い目がどこにあるのか次第に分からなくなって劇場全体がスクリーンになった様な錯覚さえ覚える。映画の各所では生理的に嫌な描写が混ざり、途中から薄々は感じてはいたけれど、エンドロールが始まると、ああ、この監督アタマおかしいなと確信する。テレビで流れることはないと思うし、映画館という閉ざされた環境で、もう見るしかない状況で、始まりから終わりまで一気に見るしかない映画だと思います。オススメはしません。