劇場公開日 2020年7月24日

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「耳がピカソ!」ブラック アンド ブルー kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0耳がピカソ!

2021年5月19日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 よくある汚職警官ものではあるが、タイトルからもわかるように黒人差別のテーマを根底において、無慈悲な差別・虐待を告発する作品でもあった。新人警官ウエストが麻薬課刑事マローンが売人を射殺する現場を目撃する。その様子はボディカメラで撮影されていたが、口封じのために仲間から追われることになるスリリングな内容。

 ブルーとは隠語で「警察」のことらしいが、ニューオリンズの貧民街の黒人からも嫌われ、さらに黒人だからと警察の横暴な尋問を受けたりもするヒロインの警官アリシア・ウエスト(ナオミ・ハリス)を表している。

 少年院を退所、軍に入隊、アフガニスタンに2度出兵、そして警官という経歴を持つウエスト。故郷に戻っても仲のよかったミッシーからも蔑視されるし、黒人だからという理由だけで差別も受けていた。昔のミッシーとは違う・・・そう、彼女も売人組織キングストン・クルーの一員だったのだ。

 汚職刑事マローンたちからも追われるうえに、復讐のためと、売人のリーダーダリウスの一味からも追われ万事休す。身の潔白を証明するためにはカメラの映像しかない!相棒にも裏切られ、援軍もない中、スーパーの店員マウスだけが頼りになったのだ。

 人種差別、偏見、思い込み、分断され孤立無援。汚職刑事を告発しようにもその前に殺されてしまうという緊迫感。クライマックスの手に汗握る展開は既視感もあるけど、やがて真実に向き合う者が現れたのが救いだった。“正義”という単純な言葉では表現できないほど、複雑な思いにさせてくれた。ちょっと涙。そして、耳がピカソ・・・ちゃう、ゴッホだよ。

kossy