「重厚なラブストーリーに感じる余韻、ドラマのような重みが役者二人からほとばしる」花束みたいな恋をした たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
重厚なラブストーリーに感じる余韻、ドラマのような重みが役者二人からほとばしる
上質なラブストーリーを観た気分。坂元裕二らしい重厚な世界を展開しつつ、優しく包み込むラストは心に突き刺さる。2人だけの国が、あらゆる環境によってほつれる過程と2人の答えに涙した。
退屈な日々を過ごす麦と絹は、終電を逃したことをきっかけに出会う。好きな音楽や小説が同じだったことから、ふたりは付き合い始める。美しくて眩しい2人の出会いは、自堕落な生活へと誘う。フリーターになっても、互いに想い合うように暮らしていく空間は、善人版『劇場』のよう。しかし、就活や誰かの死によって、2人の価値観が解れてゆく。同時に、時代の変化を彩るモノや出来事によって、刻々と変わる関係性に彩りを持ってゆく。そうして訪れる2人の答えと奇跡。その答えこそラブストーリーの名手である坂元裕二らしく、重厚で濃密なモノへと昇華している。また、キャストも豪華でありつつ、シーンが少ないのも面白い。ラブホに入る宇野祥平に終電を逃したOLを演じる瀧内公美。さらに、友達の一人に古川琴音といったキャスティングの妙が個人的にはグッとくる。
充実した内容とキャストだけに、もう少し大きな波があると良かったなと思う。ただ、カップルの口喧嘩に漂う緊張感など、リアルな雰囲気はさすが。主演の2人が持つ強さが光る1本。もう一度観たくなるような温かさが内在している。
追記
2021/1/31 2回目@MOVIXさいたま
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