「やっぱりお米が好き!」大コメ騒動 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
やっぱりお米が好き!
日本人の主食たる“米”。
求め守る為なら、声高らかの訴えや身体を張った実力行使にだって出る。
それを地でいった女たちの史実に基づく戦い!
まず、“1918米騒動”について知らなかった。
発端は、大正時代の富山県の漁村。
食物が乏しいこの村では、米は命の源。
家庭では亭主が実権を握り、漁に出て何ヵ月も帰らない事も。
その間おかか(=主婦)たちが家庭を預かり守る。
典型的な昔の日本家庭…と思いきや、
浮気亭主をおかかやリーダー格のおばばがお仕置き。
浜の女は強い!
若い主婦のいと。
彼女もまた亭主が長い漁に出、義母のお世話をし、子供たちの面倒を見、働きながら日々の生活をやりくり。
そんな時、生活をさらに困窮する大打撃が襲う。米の高騰。
米が高くなれば買えない。
買えず、食べられなければ生きていけない。
おかかたちは商店に訴えに行くのだが…。
単なる一揆に非ず。
この“1918米騒動”は日本最初の女性市民運動なんだとか。
やがてそれは全国的に拡がっていくのだが、その背景には様々なドラマがあった…。
一揆に参加しなかった者は仲間外れ。
断固として米の価格の引き下げを拒否する商店側。
女将が悪どい。あんたン所にだけ前と変わらない値段で売ってやってもいいんじゃけ…と、そそのかす。
一度は断るも、ある訳からその米を買ってしまういと。
おかか仲間たちとは溝。息子からは責め立てられる。
この時息子に、穏やかな口調で嫌味たっぷり言い返した女将の、名ヴィランっぷり!
いとは家族を養う為に仕方なかった。おかか仲間に米を少しだけでもいいから分けて欲しいと懇願しても断られ…。
実はそのおかかたちも、米を隠し持っていたり、腹黒い面も。
一揆の取り締まりが厳しくなり、遂にはリーダーのおばばが逮捕。
途方に暮れる浜の女たち…。
このまま泣き寝入りし、我慢するしかないのか…?
物価の高騰。
売る側の強み。
消費側の悩み。
訳あり一悶着の人間模様。
男尊女卑。
今から100年以上も前の漁村の出来事だが、何だか今の世と変わらぬ姿に身をつまされた。
しかし、本当に変える事は出来ないのか…?
いや、古今東西、たった一人の行動でも変える事が出来る。
いとはどちらかと言うと、控え目な性格。
自分に自身が無く、いつも自分は空回り…。
そんな彼女を、義母が叱咤激励。
街から来た若い記者がおかかたちの一揆に心を打たれ、応援。
おばばが倒れ、いとは一念発起。
おかかたちに呼びかけ。
おばばが居ない今…と、消極的なおかかたち。
やったってどうせ…。
やらなくてどうする?
それが浜の女?
浜の女の底力を見せてやれ!
井上真央はさすがに巧い。漁村の女房に成りきって、好演。
キャストは富山県出身の面々だとか。
室井滋は当初はオーバーなメイクと演技で気になったが、徐々にこちらもさすがの存在感を発揮。
義母役の夏木マリも好印象を残す。
他、個性派が織り成す群像劇。
富山県出身の本木克英監督が長年温めていた企画を映画化。
序盤はコミカルに、シリアスなテーマも織り交ぜ、ラストのおかかたちの“戦い”は痛快に。
娯楽良作ではあるが、同監督のユニークな題材の時代モノ『超高速!参勤交代』には及ばず、ちと単調だったかなと。
まあでも、歴史の勉強になったし、改めて思った。
やっぱりお米が好き!
今日も夜ご飯は、美味しく炊いた白いお米を食べよう。
米米CLUBのEDの主題歌がおかかたちの奮闘を物語っている。
愛を米て。