「室井滋の演技に震える一作。」大コメ騒動 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
室井滋の演技に震える一作。
歴史の教科書にも記載されている、1918年の「米騒動」の発端となった事件、「越中女房一揆」の顛末を描いた作品です。井上真央をはじめ、多くの女性が髪のほつれも顧みず、真っ黒に日焼けした(もちろん、そういったメイクなのでしょうが)熱演しています。その中でも、室井滋のおばばの存在感は抜きん出ていて、砂かけばばあを上回る、物の怪じみた迫力を醸し出しています。
もちろん物語を演出する上での多少の改変は含まれるものの、物語が語る内容は、概ね実際の事件をなぞっているそうです。シベリアへの出兵が噂される、不穏な状況にある日本において、現状を変えたのは女性たちだ、という視点で貫かれた本作では、男性達は女性に付き従うか、ただ狼狽するか、あるいは威圧するか、といった役回りに徹しています。そうした男性達の現状肯定的で、傍観者的な立場を体現するのは、中尾暢樹演じる新聞記者です。身体を張って必要なら強い者から奪うことも厭わない女性たちと、それを眺めていながら、社会に影響力をもたらす力は握り続ける男性、という構図が浮かび上がってきます。
本作は富山各地のロケ地、建物で撮影を行い、さらに同地出身の俳優が大勢出演しているなど、『思い出写眞』へと続く、「富山映画」の一作となっています。
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