劇場公開日 2020年2月28日

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「生まれてくる方法はひとつしかないのに死に方は幾通りもあるのだ。」ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像 はるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5生まれてくる方法はひとつしかないのに死に方は幾通りもあるのだ。

2022年7月3日
PCから投稿

フィンランドの映画というやつを初めてみた。
年老いた画商の末期。絵画の売り買いを生業として生き抜いてきた老人。自分の目利きの優秀さをとことん信じ切ることができずにこの業界で年月だけを重ね、過去の小さな成功と失敗を反省するわけにもいかず肯定さえもできずこの歳まで生き抜いて、生き抜いてきたことだけを自慢に画商仲間とカフェで談笑していることが日々の愉しみ。そんな風情が絡みついた老人。
演じるのはとても厄介なことだったろう。しかし、見事に演じ切っている。実にあっぱれ。
映画が始まってすぐに主人公は最後に死ぬと思った。そして、どんな死に方をさせるのだろう・・と、そんな考えに取りつかれて最後まで見てしまった。
ビジネスと生きがいは相容れないことは十二分に理解しているはずだけれど、この老人には最後のディールを成功させてやりたいと強く思ってしまった。
人の一生は80%が後悔。と、するならば20%は肯定できる瞬間があると言うことなのだ。しかし、その瞬間を生きているあいだ、もしくは死に際にでも味わうことができれば最高に良い人生だったと言えるはずだ。この映画の唯一の救いは、主人公が日々の何気ない暮らしの一コマの中で口笛を吹きながらこの世を後にしたことだけだ。

このような死に方が、やっぱりいい。

はる