劇場公開日 2020年2月28日

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「サイン欠如の理由ですが実は私たちも不思議に思ってました。」ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5サイン欠如の理由ですが実は私たちも不思議に思ってました。

2020年3月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

レーピンのキリスト、か。それがどれほどすごいのか正直わからないが、老人がそれまでの見識眼で惚れ込み、全てを賭けてもいいと思えるくらいの代物だということは伝わる。
不勉強ながら、ユーロの貨幣価値がぴんと来ないので後で調べた。1ユーロ=120.52円だった。つまり落札額1万ユーロは120万円。富豪に売りつけようとした希望売価12万ユーロは1440万円か。美術商なんて博打うちのようなものだな。
丁々発止のゲーム。それは、真っ当な商売なのか、詐欺なのかわからなくなってくる。最後老人は去り際、我が娘に「彼によろしく」と言う。孫を「彼」と呼ぶところには、突き放した感よりも一人の男として認めた気持ちを感じた。

そうそう、僕も疑問に思っていた「サイン欠如」の訳。その答えは終わり間近に明かされる。というか、推察される。その理由が腑に落ちた。信仰へのリスペクト、さもありなん。(もちろんここでは書きませんが)

ヨーロッパの映画はいいなあ。東欧もいいが、北欧ものの冷淡さの中にある人間臭さは、まるでその風土を反映しているように思えた。

栗太郎