辰巳のレビュー・感想・評価
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暴力と愛は紙一重
久しぶりに邦画のノワール作品をみた。私はすぐに消されてしまうような世界線だった。
暴力を働くとき、どうしても人と人は接近しなくてはいけない。銃の射程の距離、ナイフで刺す距離、顔面に唾を吐く距離。その身体の距離が精神の距離と共振して、殺意に転じる友情≒人情を形成していく。だがそれは一見愛情にもみえてしまう。
だからこそ本作の一家のような暴力で支配するホモ・ソーシャルな世界では同性愛を排除して彼らの距離の近さはせいぜい友情≒人情であることを示さなくてはいけない。または疑似家族として。そんなことをメロドラマではない本作から改めて実感した。
遠藤雄弥と森田想をはじめとして役者の演技がとにかく素晴らしい。裏社会に本当に生きているようだった。それは瞳の澄んだ鋭さに起因しているのかもしれない。私は裏社会に生きたくもないが消されたくもないので、辰巳のような瞳の鋭さは持ち得たいものだ。
脳天にガツンとくる衝撃作
監督デビュー作「ケンとカズ」、本作「辰巳」と、小路監督の作品では主人公の生き様がストイックに刻印される。一作目があれほど激賞され、二作目をどう打つかはかなりの悩みどころだったはずだが、8年という歳月の分だけ脳天にガツンと喰らわす作品に仕上がった。裏社会に生きる辰巳は狂犬揃いの集団の中でいたって冷静沈着な人間ではあるものの、その特殊職能はかなり強烈。こういう人間を本気にさせると極めて厄介なわけで、一人の少女の復讐劇に彼が手を貸すことで壮絶な死闘が繰り広げられていく。激ヤバなキャラ達がひしめきあいながらもストーリーは丁寧に展開し、人と人が化学変化を巻き起こし、心象をうつろわせていく様もきちんとポイントを押さえ、なおかつ無駄がない。そして肝心のアクションは銃撃から肉弾戦に至るまで、土と血が混ざりあって香ってくるかのようなリアルさがある。自主映画ならではの徹底したこだわりと執念が貫かれた衝撃作だ。
【”邦画悪人髭面俳優大集合映画!””この作品を夜中に観て面白いと思った私は変態でしょうか?””ハイ、変態ですが、情には厚いと思います。””テヘヘ。”】
<Caution!内容に触れています。>
ー この映画のフライヤーには、
”希望を捨てた男と復讐を誓う少女が辿る、前代未聞のジャパニーズ・ノワール!”
という惹句があるのだが、この映画の魅力はジャパニーズ風ではない所ではないかなと思うのである。
無国籍であり、2024年公開映画でありながら、登場人物がガラケーを使っている所も、時代がいつであるか分からないように小路紘史監督はしているのではないかと思ったからである。-
■裏稼業で死体処理の仕事もしながら漁業で働く孤独な辰巳(遠藤雄弥)はある日、元恋人・京子(龜田七海)が抗争に巻き込まれて殺される現場に遭遇する。
一緒にいた京子の妹、葵(森田想)を連れて逃げる辰巳。最愛の家族を失った葵は復讐を誓い、京子殺害の犯人、竜二(倉本朋幸)と松本(渡部龍平)を追う。
口が悪く、唾を矢鱈と吐く自動車修理工の生意気な彼女と反目しあいながらも、辰巳は復讐の旅に同行することになる。
◆感想
・ご存じの通り、小路紘史監督は2015年公開の『ケンとカズ』で、一躍名を上げたがその後、全く作品を公開してこなかった。この作品が久方ぶりの第二作で自主製作映画である。
・主人公の辰巳を「ONODA 一万夜を越えて」で強烈なインパクトを残した遠藤雄弥が演じ、京子の仇を取ろうとする葵を、どんな役でもこなす森田想がパワフルに演じていて、宜しい。
・他は辰巳を気遣う自動車修理会社で働く後藤を演じた後藤剛範を筆頭に、悪役髭面俳優オンパレードである。ハッキリ言ってムサクルシイ。だーが、それが辰巳を演じた遠藤雄弥の端正な顔を引き立たせており、良いのである。
・上記したように、時代や場所をハッキリとさせない作りも良いかな。一点、残念なのは辰巳の弟を演じた藤原季節が、冒頭で殺されてしまう所かな。
<現代の邦画の潮流の中、今作のようなテイストの映画は、絶滅危惧種になりつつあるのかもしれない。だが、上記したように無国籍、時代を曖昧にした舞台設定であれば、マダマダニーズはあるのではないかと思った映画である。
そして、ヤッパリ遠藤雄弥、森田想は良い俳優だなあとも思った映画でもあるのである。>
日本ノワールもイけてます
最近、韓国ノワールの「新しき世界」「毒戦」「楽園の夜」「警官の血」等を立て続けに観て、この暗い世界にかなりハマってたのだが、世界観が全く違うこのジャパニーズノワール「辰巳」も韓国に負けず劣らずかなりイけてました。
ここは当然日本の何処かなのだが、なんとも言えない無国籍ムードが漂い主な舞台は廃車置き場や工場内。そこでのやり取りは怒号と罵り合い、暴力、殺人、死体処理。出演者は限られ、表の仕事を持ちながらヤクザな稼業も担う奴らと元半グレ殺人狂兄弟。普通ありがちな警察や政治家や組織のドンや宗教団体などは一切出てこない。なので背景となる社会の闇を問うたりはしない。
ストーリーは辰巳と葵に襲いかかってきた不条理が復讐の連鎖を引き起こしていくシンプルな展開。驚くラストもない。
でも、惹かれるんです。この映画「辰巳」。役者さんたちの演技か、演出の妙か、。ジャパニーズノワール研究を進める為にも、もう一回観てみたいです。
真鍋昌平ですか?
たまたま予告編で見ていてちょっと気になり時間がある時に観に行ったという程度で鑑賞してみました。予告編では「目的の無い男が~」とか「復讐~」みたいな事が流れていましたが、そんなことはさておきストーリー以上に役者やリアルさに魅了されました。
とにかく登場人物が汚い。ビジュアルや行動言動全てが汚い。
薄汚れた格好や作業着、伸ばしっぱなしの坊主頭、筋彫りだけの刺青、代り映えの無い単調な風景や錆びた工場や型落ち乗用車がその底辺のリアルさを醸し出しています。真鍋昌平の世界です。
全編通して華々しいものは一切無く淡々と物語が進行して行く中で特筆すべきは森田想さんと倉本朋幸さんの演技。むかし地元にこういう輩いたよなーというような強烈なインパクトでした。
実写化に伴い一般向けにキャラや世界観の脚色がされているウシジマくんやスマグラーよりも生々しさで優る映画でした。
真鍋昌平の漫画が好きな方にはオススメです。
ジャパニーズ・ノワール
辰巳=ドラえもん、葵=のび太
久々にバイオレンスなノワール邦画を鑑賞しました。
遠藤雄弥演じる辰巳がドラえもんで、森田想演じる葵がのび太的な立ち位置だな…と。
他の映画でもこういう例えをしたことがありますが、
主人公は辰巳というより、葵なんですよね。葵中心に話が進行するので。
話の展開やひとつひとつのイベントに意外性はないものの
観客を引き寄せる演出がなされていて、各シーンそれぞれ食い入るように観ました。
やっぱりポスターになっているシーンが私は好きでしたね。
それにしても倉本朋幸演じる竜二が本当に頭悪そう&嫌なヤツで悪そのものなのが
良かったですね。こいつがラスボス的な扱いなのはガッカリしましたが、
本当に嫌なやつをこれでもかというくらい体現していて
笑えるくらいに面白かったです。
新しいとおもったのは辰巳がやっている仕事ですね。
見ちゃおられませんし、こんなの倫理観壊れていないとできないですし、
仕事にしちゃいかんだろとも思うのですが、ここだけが新しいと感じた次第です。
正直、あまり好きなジャンルではありませんが
たまに観ると刺激がありますね。
※私の右斜め前の観客が、座るなり紙袋をガサガサいじりながら持ち込んだものを食べるし
扇子であおいでいて風がこっちまで来て気持ち悪いし、本当に勘弁してくれ!と思います。
おそらく私よりもはるかに大先輩の男性ですが、その年でそのマナーは非常に恥ずかしいですよ・・・
脚本が素晴らしい。応援したい監督さん。
ユーロスペースの立地は最悪だが、年に1〜2作品、ここでしか観られない作品があるのでたまに出掛ける。8年がかりで制作した自主制作の映画だそうだが、いつの時代設定なのだろうか?携帯を使う場面も出てくるがそれ以外はまるで昭和のような雰囲気の映画。出演の辰巳役の俳優以外の男性陣はほぼヤクザ(かその類)だが、皆知らない俳優ばかりで、笑わないお笑い芸人のような風貌で薄汚れた服装の人達が多く、Tokyo Vice のようなスーツ姿のヤクザは誰も出てこない。姉を殺されて復讐に燃える19歳の妹役の女優もインパクトが凄い。グロい場面もあるにはあるが、最後に少しだけ辰巳の心の温かさを感じて作品は終わる。この監督の作品は初めて観たが、脚本も素晴らしいし、是非頑張って貰いたい。上映後に俳優陣の舞台挨拶があったが、作品中の彼らとは全くの別人だった、良い意味で。
傷みが伝わってくる一本でした
迷って一度はやめたけど、 時間の関係でこれしか見られなくて見た 新...
迷って一度はやめたけど、
時間の関係でこれしか見られなくて見た
新感覚のノワール系というだけあって、
もともとのそっち系統が好きな人だと、
ちょっと物足りないかとも思うけど、
私にはちょうど良かった
キャラがみんなできてて、
かつキャスティングもみんな良かった
人間模様もきちんと書かれていたし、
『これはコメディー的なシーンなの?笑うとこ?』みたいに迷っちゃうところがあったりとか、
いろいろと良かった
ONODAで一目置くようになった、
遠藤さんのキャラも良かった
全然興味がない人には勧める気ないけど、
少しでも迷うなら、見るべき作品
クールな中にエモさを感じる
冒頭で辰巳のバックストーリーが披露されるが、このシークエンスからして熱量が高く引き込まれた。その後も、組織の上前をはねた男を処刑するシーン、その死体を解体するシーン、更に辰巳と本作のヒロイン葵の邂逅を少しユーモアを利かせつつオフビートに表したシーン。とにかくドラマのスタートダッシュがパワフルで見事である。
中盤に差し掛かると、辰巳の元恋人・京子の死でドラマは更に熱を帯びていくようになる。ここからは辰巳と京子の妹・葵の関係を軸に、物語の方向性がしっかりと定まるようになる。それまでの力業一辺倒だけではなく計算高く抒情性を醸すあたりは、見事なバランス感覚のように思う。
何と言っても、クールな辰巳と無鉄砲な葵。二人のギャップが面白い。ドラマ自体は凄惨な復讐劇だが、二人のやり取りが幾ばくかのペーソスとユーモアを持ち込み、どこか親しみを持たせている。
個人的には、クライマックス前夜の辰巳と葵の会話でホロリとさせられてしまった。本作で最も印象に残るシーンだった。
製作、監督、脚本、編集は「ケンとカズ」で衝撃的なデビューを飾った新鋭・小路紘史。「ケンとカズ」も熱度の高いノワール映画だったが、その時よりも泥臭さが後退し洗練された印象を持った。
基本的には前作と同様に手持ちカメラによるドキュメンタリックな演出がメインである。しかし、今回は要所の会話シーンは安定したフレーミングによる切り返しショットで構成されている。この辺りの静と動の抑揚の付け方に小路監督の演出の幅の広がりが感じられた。
ただ、クライマックスが二段構えのようになってしまったのは、非常に勿体ないと感じた。そのせいで終盤の展開は雑になった感は否めない。負傷した身体で車の運転が可能だろうか…とか、辰巳の兄貴はずっと港のふ頭に留まっていたのだろうか…とか、色々と気になってしまった。
キャスト陣は中々に厳つい顔のオンパレードで良かった。インディペンデント映画なので、いわゆる有名な俳優は出てこないのだが、それがかえって新鮮に観れる。特に、適役となる竜二のサイコパスな造形、辰巳の兄貴のどこか哀愁を帯びた佇まいが印象に残った。
そして、そんな強面な面々の中で紅一点、圧倒的な存在感を放った葵役、森田想の熱演も素晴らしかった。物語のエッセンスの部分で「レオン」を想起させるところもあるのだが、ナタリー・ポートマンとは真逆のアプローチでこの難役に挑んだことに称賛を送りたい。
思っていたほどグロではない。
そんなにいいかこの作品?
そんなにゆうほどの作品かな?
自主映画であり監督みずからプロデューサーも努めていて、無名の役者が頑張ってるからで、そんなに褒めるところはない。商業映画で同じ金額で見せるような作品ではない。
まずシナリオが幼稚園過ぎる。主人公の行動や敵役の行動が全く不明。妹を連れてきたら何か変わるのか?妹は生体実験の貴重な身体なのか?
暴力団の構造も歪で、一家一家って言ってる割に、組の上が出てこないし、チンピラ同士でいざこざのシーソーゲームやっているだけ。見ていて飽きるし何がやりたいのか?何がゴールなのか分からない。
監督の意気込みは買うがだったらそれ相応の作品にするか、映画料金1000円にしないと釣り合わない。
酷評したのも商業映画ベースで公開したからで、自主映画なら高評価。
血まみれ油まみれの服は着替えたほうが…
登場人物の顔面力がスクリーンにみなぎるチンピラ映画。いわゆるイケメンは主人公の辰巳こと遠藤雄弥と弟役の藤原季節だけで、季節の出番はごくわずか。そのほかは出荷前の牛(爆笑)と葵に評される後藤を筆頭に、街なかでは絶対絡まれたくないある時期の清原のような顔面ばかり(失礼!)。その遠藤もまったく瞬きしない目力を108分間発揮し続ける。
話はシンプルながら、終始歯を食いしばり握り拳に力が入る見応えのある展開で、最後はなんかグラン・トリノっぽさがあった(こっちコロナ・エクシブだけど)。どうでもいいけど、辰巳って名字なのか名前なのかやや気になった。
小路紘史監督作は2016年のケンとカズ以来。調べたらケンカズの次が本作のようで…。自主制作でやるのは大変だろうなと思いつつ、スポンサーに気を遣うようなヌルい作品は観たくはないので、今後も応援していきたい。
出来が違う
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