劇場公開日 2019年11月30日

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「なぜ「白黒」なのか?」馬ありて Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5なぜ「白黒」なのか?

2019年12月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

“見せ方”に不満が残る映画だった。

まず、なぜ「白黒」作品なのか?
モノクロームにすることで、雑然とした現実から離れた神秘的な感じや、“昔の映像”のように見える効果を狙ったのかもしれない。
しかし、ドキュメンタリーの“中身”と合っていないので、わざと色を落とした“不自然さ”が感じられる。また、色がないために、暗かったり灰色一色になって、映像の詳細が分かりづらいところも多い。
肝心の「馬」は、黒色に沈んだ異様な生物と化し、生き生きした美しい存在ではない。イメージの一コマなら効果的だが、全編では無理がある。
瑞々しい北国の自然や、「チャグチャグ馬コ」の祭りも、きちんと映されているとは言い難い。

また、十勝と穂別を中心に、撮影地域は複数にまたがるが、同じ撮影地域をひとまとめにして見せないことも不満だ。
細切れにシャッフルする必要性が感じられない。
次々と入れ替わり、テロップも断片的なので、現在の場面がどこの地域の話か分からなくなる。メインキャストのおじさんの顔が出てきて初めて、判別できる状況だ。

内容にも、今ひとつ“深み”が感じられなかった。

公式サイトでは、「映像詩」と謳っている。
よって、もともと北国の「馬と人間の営み」を広く“映す”描くことが目的で、一つのテーマを深掘りする目的はなかったのかもしれない。(あるいは、一テーマで映画一本は無理だったのかもしれない。)
ただ、本作品は「馬」ではなく、馬と関わる「人間」がテーマのようだ。
そうであれば、もう少し個々のテーマに密着したものが欲しかった。「ばんえい競馬」一つとっても、公営・草競馬といろいろあるようだが、“遠巻きに見たイメージ”で終わってしまった印象だ。

「馬と人間」の様々な姿を見ることはできる。だが、内容と映像がちぐはぐで、“食い足りない”作品だった。

Imperator