「【”真っ当と、虚ろは紙一重。虚ろの横に口を入れると嘘になる・・” 笑わない佐藤二朗の狂気を纏う姿、山田孝之の哀しみを纏う姿が印象的な作品。】」はるヲうるひと NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”真っ当と、虚ろは紙一重。虚ろの横に口を入れると嘘になる・・” 笑わない佐藤二朗の狂気を纏う姿、山田孝之の哀しみを纏う姿が印象的な作品。】
ー 多分、この作品は(こういう書き方は嫌いだが、敢えて)観る人によって、感想が全く異なると思う。地元が舞台なのでお客さんはソコソコ入っていたが、途中退場する人、寝ている人もいた。
又、”R15+指定”なのも”新人監督作”としては、ギャンブルだと思う。
けれど、今作は、佐藤二朗の強い想いが込められた映画だと、私は思った。ー
■感想
・子供の頃に起きてしまった出来事により、人格や人間関係が歪になった、腹違いの、テツオ(佐藤二朗)と、トクタ(山田孝之)とイブキ(仲里依紗)兄妹。
そしてどこかの島の”売春宿”で働く、4人の”はるヲ売る人”
テツオは、只管に狂気性を漂わせ、売春婦にも、トクタにも暴力を振るう。
ー 笑わない佐藤二朗の狂気を纏う姿の怖さ、山田孝之のテツオの存在に怯える表情、態度が印象的。
4人の”はるヲうる人”を含めて、皆、どこかが壊れている。
売春婦たちの、饐えた匂いが漂ってきそうな化粧部屋の誂えや、活気の感じられない島の港の風景。ー
・が、前半の展開は、”やや嫌な感情”を持ってしまった・・。
ー で、途中退場する人、寝る輩・・。ー
・今作をグッと盛り上げてくるのは、中後半だろうと思う。
トクタに火傷を負わせたテツオが、”あの部屋”でトクタに”たまには飲もう・・、兄弟だろう・・。”と自分の”真っ当な”家庭に招き入れ、ビビりまくっているトクタにビールを注ぐシーンから、トクタの全存在を否定するような、罵声を浴びせ、唾を吐きかけるシーンの緊迫感。
(前半からテツオが登場すると、緊迫感が凄いのだが・・)
◆今作の白眉
幼きテツオが母に髪を切って貰い、母が自らの髪を切って結ぶシーンと、その後の展開及び山田孝之演じるトクタが”真実をテツオと壊れた人々に血を吐くように叫ぶ”シーンだと思う。
ー 山田孝之の役者としての凄さ、全開シーンである。ー
<初監督、脚本でこのレベルの作品を造り上げ”R15+指定”と言う不利な条件にも関わらず、世に叩きつけてきた佐藤二朗は、福田監督作でのヘラヘラした演技など微塵も感じさせない漢であると思った作品。>
◇その他
・撮影は南知多で行ったのだと、エンドロールを見て知った。
成程、それで冒頭のタコのシーンなのね・・。
- これが分かる人は、愛知県民です。 ー