「秀逸な設定と脚本が、推理+コメディーを見事に成立させている。」ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密 アルさんの映画レビュー(感想・評価)
秀逸な設定と脚本が、推理+コメディーを見事に成立させている。
名優達の豪華な共演。コメディーのつもりは無いのかもしれないが、クスっと笑えるやりとりも多く楽しい。
推理サスペンスのガチ勢には物足りなく感じるかもだが、個人的には推理も謎解きも心地良く、起承転結が明確で演出も素晴らしかった。
懐かしの【刑事コロンボ】の様な"ユルッ"とした雰囲気と、"ヌルッ"とした推理。それぞれクセのある容疑者達に独自の視点で、細心の注意を払った問い掛け。名探偵ブノワ・ブラン役をダニエル・クレイグが好演。ブランの語り口についつい引き込まれてしまう。
鍵となるマルタ役をアナ・デ・アルマスが熱演。容疑者の1人なのに、''嘘を吐くと嘔吐してしまう''という設定が素晴らしい。吐き慣れているので吐いた後の振る舞いも格好良い?結構な勢いもあるので、色んな意味で注意!(笑)
そして何よりランサム役クリス・エバンスが、違和感満載。"キャプテン・アメリカ"の印象がどうにも拭えないまま、悪態の吐き方が(良い意味で)堪らない。怪しいのか、素なのか、絶妙な演技で煙に巻く演技はさすが。
軽く"過程"を見せながら、じわじわと"解答"に近付けていく演出。その"過程"を容疑者達はブランに正確には伝えない。この"嘘"を鑑賞者は客観的に観て、裏を読みながら推理するのが楽しい。
差別や貧富の差など隠れたテーマも多く、観返してみると細かな描写も多々あって、とても丁寧に作られた脚本なのが分かる。決して重くないミステリー、万人に観てもらいたい良作。人間の裏を観せられたせいか、スッとする気持ち良いラストも必見。