「怪談「ラ・ヨローナ」をモチーフにしただけ!」ラ・ヨローナ 彷徨う女 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
怪談「ラ・ヨローナ」をモチーフにしただけ!
虐げられた女性たちの復讐を描いたスリラー。
2018年(グアテマラ)ハイロ・ブスタマンテ監督。
てっきり『ラ・ヨローナ 泣く女』の続編のホラーかと思って借りました。
ジェームズ・ワンのホラーとはなんの関係もないので、お間違いなく!!
アート(芸術)系の政治ドラマに、中南米に伝わるヨローナの怪談をまぶしたような作品。
結構、惹きつけられて夢中で観ました。
凄く良いんだけど、悲しみが胸に迫ってこないのです。
(なんか惜しいです)
グアテマラの血塗られた歴史。
20万人以上が殺された大量虐殺の罪で裁かれるエンリケ老将軍。
1981年から1983年には先住民のインディオを、一ヶ月に3000人殺したと言う。
裁判で政治的決着がつけられエンリケは無罪になり自宅軟禁に。
弾劾する民衆に取り囲まれ邸宅は家族も怒号を浴びながら、邸宅に閉じこもるしかない。
そこへ新しいメイドのマリアが手伝いに来る。
(実はマリアはエンリケに子供2人を殺された上、夫が行方不明なのだ)
当然マリアの目的は復讐かと疑われます。
ヨローナとは中南米に伝わる怪談で、殺した子供を後悔する母親が嘆きのあまり入水自殺する・・・と言う怪奇譚です。
《マリア、行動せよ》・・・今か今かと待てど暮らせど、やたら持って回って、
髪洗ったり、風呂に入り裸を見せたり・・・ラチがあかない!!
そのうちに将軍の老妻がストレスでおかしくなる。
自分が虐殺の被害者になって、夢の中を彷徨らうことに・・・。
当のエンリケはまったく罪を悔いる様子もなく、
老妻、女医の娘、孫のサラに罪の重さがのしかかる。
回想シーンが真に迫り、映像も幻想的です。
やはりマリアの復讐にポイントを置いて、悪い奴・・・エンリケを徹底的に糾弾してほしいです。
ラストで方向性がさらにズレるのが、残念です。
グアテマラのハイロ・ブスタマンテ監督は才気溢れて将来に期待が持てます。
政治告発を芸術的映画として撮る。
やはりここに弱点を感じました。