ミセス・ノイズィのレビュー・感想・評価
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騒音おばさん騒動をモチーフに、現代的な対立事象を透視図的に描き出す...
騒音おばさん騒動をモチーフに、現代的な対立事象を透視図的に描き出す。
ステロタイプといえばそれまでだが、近視眼的な作家を篠原ゆき子が好演。
登場人物との距離感が近くなったり遠くなったり、なかなか面白い描き方の天野監督のこれまでの作品も見たくなった。
子役が可愛い
騒音おばさんになってしまう背景が色々あるから
一概には、迷惑行為とは言えない。
子供は、実家に預けるかシッターさんを
雇う方がよかったかもね。
時間の都合で半分までしか、
見れなかったですが。。。。
後味が素晴らしい(これは戦争だ!)
これは戦争だ!2人の女優の。
漫画・ガラスの仮面の作中劇
「ふたりの王女」を思い出した。
本来のヒロインは真紀だ。しかし、観ていてなかなか真紀に共感出来ない。むしろ美和子の方が真っ当だと感じてくる。
そのうち、これは「美和子・真紀・直哉」の、三世代のジェネレーションギャップも描いていると気付く。
観客の年齢やこれまでの生き様によって、三者の誰に感情移入しやすいかも違ってくるだろう。
また、真紀に世代は近いが客観的で多面的な視野をもつ人物として、夫の祐一や担当編集者も配置されている。
終盤、真紀が心から素直に謝罪した時、それまで真紀サイド・美和子サイドいずれを応援していようとも、二人のヒロインに好感を抱く事が出来る。
それは演じている篠原ゆき子と大高洋子が実に見事に、ここまでのバランスを維持してきたからだ。
なるほど、序盤思ったほど真紀に肩入れ出来ず、むしろ否定的感情を抱いてしまったのも、篠原ゆき子の演技のなせる技だったか!
大高のパワフルさに負けないくらいの「微妙に嫌なオンナ感」を出さなければ「平凡な主人公」で終わってしまい最後のカタルシスで一気に挽回する事が出来ないのだ!
これは驚いた!篠原、大高、いずれの演技が優ってしまってもこの作品は上手くいかない。つまり2人には丁々発止の真剣勝負で均衡を保ち続けて貰わねばならない。そうしなければ簡単にヒロインの座はいずれか片方のものとなってしまうのだ!
難しいのは相手に非があるように見える場面こそ、自分にも非はあるように見せる必要がある事だ。更にその上で「でも、これって別に悪くはないんじゃない?」とも感じさせねばならない。
演じきった2人は見事としか言いようがない。
脚本も本当に素晴らしい!
タイトルから例の騒音障害事件をモチーフにしたとわかるのでストーリーの見当はつく。
「ある時点」から多視点になる事も、最後に「あの人物」が助けに入るであろう事も、最初っから予測がつく。
それなのに、これだけストーリー展開が読めるにも関わらず、味付けの予測はつかないんだなぁ・・・!
例えば「この材料ならハンバーグを作るだろうな」とはわかっているのに、なかなかオーソドックスには進まないというか、どこでどんな下拵えを仕込んでくるか、どんなスパイスや調味料を使うのか、常に選択の余地を絶妙に残している。
どの場面からでも、コメディにも、ラブロマンスにも、社会派ドキュメンタリーにも、サイコスリラーにも、サスペンスにも、ついでにホラーにだってスムーズに持っていけちゃうんだなぁ。
しかも、無駄なシーンの削ぎ落としも凄い。ディズニーアニメの大作では絵コンテ、ビジュアルコンテの段階でボイス録音まで行われ、何度もストーリーについてディスカッションが行われる。描かなくても観客の推測で話が通じるシーンは削ぎ落とされ、最高のテンポで物語が展開出来るようにスリム化される。
同様に本作も実によく練り上げられ、削ぎ落とされていると感じた。
それは、監督と各演者がそれぞれの役どころを充分深く掘り下げているからこそ可能になるのだろう。
完成された映像には映し出されない削ぎ落とされたシーンや、役者の皆さんがどれだけ本編と関係のないエチュードを繰り返されたのかと感心する。
その結果なのか「泣けた!」
元々涙脆い方ではあるが、近年は映画を観て泣いた事がなかったのに、数年ぶりに本当に「泣けた」
まさか、この作品に泣かされるとは思いもしなかった(笑)
実に上手いんだなぁ!こんな設定、いくらでもドロドログチャグチャの救いがない作品に仕立てられるのに、本作は驚くほどに後味が良かった!
ちゃあんとね。観客の非難感情の矛先が「あるもの」にすり替わるように出来ているの。だから誰も傷つかない。
ハートウォーミングなヒューマンドラマのハッピーエンドに帰結する。
よもや、ここまでのシナリオ、ここまでの作品だとは思わなかった。
嬉しい誤算で楽しませてくれた天野千尋監督と俳優陣に敬意を表したい。
天野監督、これから益々「要!チェック」だ。
主人公のマキさんの性格に問題がある
主人公のマキさんの性格に問題があるというか随分極端だなあと感じた。
すぐに浮かれて踊ってるし、人に何か言われるとすぐに落ち込んだり喜んだり振り回されやすくて単純で短絡的です。
まあだからドラマになるんでしょうけれど。。。私も子どもがいるから分かるけれど、ちょっと迷子になっただけでもものすごく焦る。でもいなくなったら、生きて帰ってきてくれれ
ばそれだけでいい、と親なら願うもの。隣の変わったおばさんだろうと誰だろうと連れて帰ってきたなら、とりあえず泣いて喜ぶと思う。連れて帰ってきてくれた相手に対してあんなにいきなりキレて攻撃的になるかなあ?そりゃあ、時間が経つにつれ冷静になってきて沸々と怒りが込み上げてくるというのなら分かるけれど。
それでも、私だったらもっと子どもの様子を観察すると思う。どう見てもおばさんとおじさんを怖がっていないし、また遊びたいと言う。子どもは正直だから、怖かったり変な思いをしたら、2度と近づこうとしないだろう。マキは子どもの気持ちを分かろうとも言い分にも耳を傾けようともしない。
こんなに観察眼のない人が小説家って信じられない。おばさんが、「あんなにピリピリしてていい小説なんて書けるはずない」と言うのはいい得ている。
ともかく、こういう極端なキャラによって、物事を正しく見たり理解することの大切さがあぶり出される映画だ。自分の判断というのはあくまでも自分の判断であって、何か意見を言っても、「まあ、私の個人的な判断だけどね…」って思うようにして、決して全貌は見えていないことを自覚する冷静さが現代人には必要なんだろう。
1を見て10を分かるなんてあり得ないんだから。
タイトルなし
世の中の出来事は見方を変えれば色々と見えてくるのにそれがなかなか出来ないですよね。SNS全盛で情報過多の時代の今は特に。そんなところも描きつつ、人の本当の優しさを見せつけられた見事な脚本と作品でした。
佳作、しかし残された問題も
現代の、インターネットを含めたメディアと社会について、よく描かれていたと思います。
しかし、問題は小説家である主人公の夫。
私は、この出来事の元凶の大部分はこの人の子育てを妻に投げっぱなし問題にあると思いますし、物語の序盤ではそう受け取れるように描かれていたと思うのですが、その点はその後は取り上げられずに終わります。
隣家の美和子の夫が「ありがとう」と妻に言うのは、明らかに夫婦関係の対比でしたよね……?
主人公が夫に「自分のことしか見えていなかった」と謝るのも違和感。それは夫もまったく同じだったはずです。
出来事に常に他人事のようなこの男こそ、私にはかなり不気味な存在に思えました。
銃口はどこを向いている?
(これから観る方には少しネタバレあります)
大事なモノや目の前の生活を守りたいが故に傷つけ合ってしまう人々。
むしろ皆被害者。
…では加害者は?
タイトルから「アブナイ隣人」と闘うサイコな話かと思えばさにあらず。
個人的に仕事でモンスターカスタマーへの対応を抱えている時期だったので不安があったが、早々にそういう話ではないことが分かってひと安心。
しっかり堪能できた。
ただ、お隣りさんがエキサイトしていく様とか、メディアやネットが大騒ぎする流れやその人々の描写があまりにもステレオタイプというか「ベタ」というか、コントっぽいというか…。
SNSやマスコミを悪者にするってのもまあ今となっては常套手段。もちろんそれ以外の要素も描かれるんだけどさ。
でも、この予算規模としては圧倒的に頑張ってる佳作の部類だと思う。
それぞれのノイズィ
早朝から布団を叩かないといけない理由をノイズィはまきに対して最初にちゃんと説明しようとしているのに、聞く耳を全くもってないまき目線の前半フェイズではその声が掻き消されているあたりに、まき含め一般的に凝り固まった"常識"の形がある。
まきの娘が放ったノイズィ夫と一緒にお風呂入ったもんね発言さえ、先入観で最初は犯罪的なフィルターで捉えてしまったが、後半のノイズィ視点になった時、犯罪者でもロリコンでもなんでもない事が明らかになり、自分の心の汚さが露わになって恥ずかしくなった。
いかに表面的、断片的に見える部分だけで物事を判断し、善悪を決めつけてしまう人間心理が恐ろしいものかとがうまく表現できている作品である。
また全体を通して安易にバックミュージックを極力入れない事により、日常の生活音のSEが時に騒音に、また時に耳障りよく聞こえてくるのはテーマ性と噛み合ってて上手い演出だと思った。
人によって同じ音でも感じ方は違うから個々にとってのノイズィは劇中何かしらある。
世論や同調圧力で白黒入れ替えるメディアやマスコミ。世間的に上級とされる弁護士や裁判官なんかより、常に俯瞰で物事を見極め冷静な判断をしているのがキャバ嬢という職業に1番のアイロニーを感じた。
最後にひとつ。私にとっての日常のノイズィは職場の同僚が休憩中に観るYouTubeのロボットボイスのゲーム実況である。
期待とは異なる衝撃が主観を木っ端微塵にする圧巻のドラマ
主婦で小説家の真紀は出産を機にスランプに陥ってしまい、書き上げた作品も編集者にダメ出しを食らい、かつてのファンもだんだん離れていってしまう。そんな折早朝から隣家のベランダでけたたましく布団を叩く音がただでさえ毛羽だった真紀の心を蝕んでいく。溜まりかねた真紀は隣家の主婦美和子とベランダで派手な言い争いをしてしまったところその動画がYouTubeでバズってしまい、ただの小競り合いが大騒動へと暴走していく。
私はこの主人公に物凄く嫌悪感を感じていましたが、そういう先入観や偏見が本作の肝。自分が美しいと思っているもの、正しいと思っていることを他人が同じように思っているとは限らないということが繰り返し突きつけられ、そんな主観がグラグラと揺れているところに突如放り込まれる台詞が胸に突き刺さります。他人事だと思って眺めていた光景に引き摺り込まれポスターから滲むイメージとは全くかけ離れた結末まで突き飛ばされるような感覚。爽快感と気恥ずかしさが同時に胸に湧き、両目からは悔恨の涙が溢れました。こちらが勝手に期待していたカタルシスとは全然異質な衝撃を鳩尾にかましてくる実に素晴らしい作品です。あとチラッとだけ登場する洞口依子さんの演技にも度肝を抜かれました。
見方によって真実は異なる
笑って泣ける社会派コメディに、現代抱える様々な問題を提議する素晴らしい作品。
事実には、双方の真実がある。相手の立場にたって考える事の大切さを改めて考えさせられた。
どよ〜んとした気持ちで見終わるのかと思ったら、ラストのちょっとした救いで、ほろっと泣けて気持ちよく終われる、脚本も素晴らしかった。
コロナの影響で、最近、いい作品がなかったけど、久しぶりに勧めたい良作!
同じシーンも視点を変えると・・・
かつては人気作家だった真紀は、スランプに陥り焦りながらの毎日を過ごしていた。引越し先で、隣人の美和子の布団叩きを注意したことからトラブルになり、ストレスをため込み仕事も家庭もうまくいかない。いとこのアドバイスで隣人のをネタに小説を書き、起死回生をはかるが・・・。
(この作品において、歌いながら布団を叩くところは騒音おばさんがヒントになっているが、共通点はそれくらいで実話をもとにしている話ではない。存命中の騒音おばさんをネタにして不謹慎という風評があるが、それについては否定しておく。)
久々に非常にいい作品に出会った。
序盤は作家の真紀を軸に、非常識極まりない隣人の美和子が描かれる。美和子は朝6時に布団を叩いたり、真紀の娘と勝手に遊びに行ったり、旦那と真紀を入浴させたりと、完全にアブナイ人にしか見えない。
ところが、途中で主人公が変わると、同じシーンも全く違って見えるようになる。この転換が非常に上手い。巧みな脚本で観客の感情移入を誘導しており、常識は極めて主観的なものだとよくわかる。全く同じ常識を持つ人間は2人としていない。だから、トラブルになったときに常識を持ち出すと泥沼化してしまうのだ。
この「常識や善悪は主観的」というテーマそのものは、別に珍しいものではない。でも、この作品はそれをとても上手く表現できている。物珍しさではなく、その上手さを評価したい。
若干気になったのは、主人公がなぜ引っ越さないのかという描写がなかったこと。主人公に感情移入する上で、その描写は絶対にあったほうがいい。ただ、その描写を入れるのが難しい理由もなんとなくわかる。
終盤は感動的で、映画でめったに泣かない私も少しうるっとしてしまった。ぜひ見に行ってください。
15年前...
「騒音おばさん」のことは、当時ワイドショーでも散々取り上げられていたのでよく覚えていましたが、もう15年も前のことなんですね。自分も面白おかしくニュースを見ていた一人ですが、この映画は全く予想とは違う展開で、とても深い内容でした。
「騒音おばさん」が、その後どうなったのか知りませんでしたが、検索するといろいろ書いてありますね。どこまでか事実なのかは分かりませんが...。
見終わったあと席を立ったら後ろの方は号泣してました。いい映画でした。
天使にも悪魔にもなる
立場も見る角度も変えれば違うストーリーがあるだろうと予測はしていたものの、まったく上手く構成された展開に驚いた。
余裕の無さが不幸を生み出すのは実感として痛い程よくわかるが、まあわかりやすく偏り転げ落ちて行く様は呆気にとられた。
私としては、余裕の無い方の行動と視野の狭さが圧倒的に目に余る。
きっと、他者との関わり方を振り返る時なのかもしれない。
よく出来た作品だと思った。 コメディ、という感想もあったりしたけれ...
よく出来た作品だと思った。
コメディ、という感想もあったりしたけれど、笑えるところはひとつもなかった。
ひどい被害妄想にも、今時なりの危機意識からくる隣人(世間)不審にも、どちらにも身に覚えがあり、終始居心地悪かった。
特にそう思ったのは、前半の子供ワンオペにも関わらず仕事の成果を求め、どんどん自分を追い詰め、四面楚歌の思い込み視野狭窄になっていくシーン。緊急事態宣言中の自分と重なった。
だから、後半の主体交代以降の、相手の立場と背景が明かされていくにつれ、今までの自分の行いを振り替えざるを得ず、いちいち自省的になってしまう作品だった。
無駄のない演出、単館系作品の鏡!
篠原ゆき子初主演ということで何の予備知識も入れず観賞。よく出来た佳作です。ボタンのかけ違いが悲劇を生むという脚本の秀逸さと無駄がない演出。低予算でもここまで作り込めるというお手本のような作品。
天野千尋監督は以前に放課後ロストという作品を観ましたが全くハマらず今作は見事なクリーンヒットでした。
騒音おばさん役の大高洋子さんが河村名古屋市長に似ていて笑えました。子役の新津ちせちゃんは上手すぎて食傷気味になるという...ここは無名子役の方が良かったのでは。
学校教材にして良い位
お見事です!開始直後から主人公A(奥さん)には苦手な不穏さを感じていたので、大丈夫か?これ…。なんて思っていたことを後悔、する暇もない位に引っ張り込まれる中盤以降。やられました。
コメディにもホラーにもなり得るサスペンスフルな展開を、自由自在に操る監督とその背骨を構築した脚本、そしてその思いを体現した役者さん達に拍手です。
布団叩きオバサン騒動は当時「やれやれ…」ってな感じで経緯を見ていましたが、面白がって見ていたのも事実。コレは当事者だけではなく、勝手にはしゃぐ外野にも向けられた物語。今にビタッと嵌まる傑作ではないのでしょうか。
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