劇場公開日 2020年12月4日

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「見方を変えたら狂ってるのは誰?」ミセス・ノイズィ わたろーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0見方を変えたら狂ってるのは誰?

2020年12月27日
PCから投稿

 おもしろフラッシュ倉庫で育った世代ですから、そして爆笑問題の時事漫才に心を掴まれてきた人間ですから、もちろん騒音おばさんについてはよく知っています。茶化してみてた記憶もありますし、今も茶化してみています。当事者の方々はしんどかっただろうと思いますが、あんなにインパクトのある犯罪者はなかなかいませんでしたから。

 ですので、騒音おばさんから着想を得た作品が公開されると知り、非常に軽い気持ちでいこうとムビチケを購入していたわけです。しかし、聞こえてくるのは高評価ばかり、考えさせられるという感想もある。どういうことなんだ…と半信半疑で劇場に向かいましたが、不謹慎ながら非常に面白かったです。

 前半は騒音おばさんに悩む書き手の視点で描かれていくのですが、途中で騒音おばさんに支店を向けることで、そういう理由で回りから見たら迷惑行為をしていたのかということがわかります。うまいなと思ったのは、これ以上騒音おばさんを悪いように描きすぎると、もう悪役化しすぎて嫌ってしまうというギリギリのところで騒音おばさん側に視点を移したこと。巧みな演出だったと思います。

 そして、主人公である書き手は、如何に自分のことしか考えていなかったのか、また相手の表情を読み取ったり、話をしっかりと聞いたりすることが出来なかったのかが浮き彫りになってくることで、どちらにも感情移入しやすい展開になっていきます。ここだけでも凄い。

 しかし、予告編でも公開されているのでここまではネタバレしていいと思うのですが、SNSを絡めて炎上していく、そしてその実体験を自らの作品にするという展開になっていくんですけども。いや~当時自分はこれをやってしまっていたのかもしれんと自戒しました。細かいところですけど、騒音おばさんの炎上騒動を面白がっている人もいれば、これはダメでしょというクラブのお姉さんや、動画サイトに高評価だけでなく低評価もかなりついていることなど、客観性を没していないところも魅力だなと思います。よく考えられていると思います。

 最後の展開も見事でした。ネタバレを避けるためふわっとした感じでまとめると、主人公があらゆる人物に自分の想いを話すのですが、答えを言わせないいい意味での余白を残した演出が素晴らしかったと思います。実質ハッピーエンド仕立てにするのはちょっともったいないかなと思ってしまってもいるのですが、騒音おばさん側の行動を見ても、どちらも"悪"としてカテゴライズすること自体が間違っているように示したいという作り手の意図は感じたので好みの問題ということで。

 とにかく、軽い気持ちで見に行ったのですが、ここまで深い作品になっているとは思いませんでした。監督の次回作にも大いに期待したいですし、見事すぎるキャスティングになっていたので、まだそこまで有名ではない演者の皆さんの活躍にも期待します。

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わたろー