「秋田県出身者の意見です」光を追いかけて といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
秋田県出身者の意見です
私は秋田県出身です。
そして本作は秋田県出身の監督が秋田県出身俳優を多数起用し秋田県を舞台にして全編秋田でロケを行なった映画です。
これは秋田県出身の私がレビューしないとと息巻いて、先日鑑賞してきました。
映画の事前知識はほぼありません。「秋田が舞台」って程度の事前知識です。
結論ですが、けっこう楽しめました。
本作は様々な登場人物の感情が入り乱れる群像劇であり、それぞれの登場人物の考え方や立場が違うからこそ生じる軋轢や葛藤がしっかり描かれていたと思います。鑑賞前に懸念していた「秋田県出身者以外の演者の方言演技が気になっちゃうんじゃないか」という問題ですが、多少イントネーションなどに引っかかりはありましたがそんなに気になりませんでした。エンディングのクレジットに「方言指導」などの役職は多分無かったので、おそらく秋田県出身者である成田監督や柳葉敏郎さんが秋田県出身でない演者さんへの方言指導も兼ねていたんじゃないかと思います。柳葉さんはガッツリ方言で喋っているシーンも何か所かあって、「これって他県の人はちゃんと聞き取れるんだろうか」って思う場面もあって気になりました。県外の方の意見も聞いてみたいですね。
・・・・・・・・・
父の仕事の関係で、東京から父の故郷である秋田県に引っ越してきた中学三年生の中島彰(中川翼)。田舎の学校に馴染むことができず、中学校の閉校祭の準備にも参加せずに一人で趣味のイラストに没頭していた。そんなある日、彰は下校中に緑色に光る謎の飛行物体を目撃する。その物体を追いかけた先の水田にたどりついた彰は、謎のミステリーサークルと、クラスメイトで不登校の少女である岡本真希(長澤樹)に出会った。
・・・・・・・・・
田舎に住む人たちの、都会に対する羨望であるとか、コンプレックスみたいなものをよく描けていました。都会に憧れるが田舎に燻る人・都会で夢破れて田舎で居場所を見つけた人・田舎を愛し留まる人などなど、多くの人の感情が交錯するストーリーで結構良かったですね。秋田県を舞台にしていますが、他の地方に住んでいる方にも刺さる「田舎と都会」の物語になっていたと思います。
あと、若い役者陣の演技は見事だったと思います。主人公の彰を演じた中川翼さんやヒロインの真希を演じた長澤樹さんは、どちらも2005年生まれの15歳。公式HPによると撮影は2019年9月に行われたそうですので、当時は二人とも13歳ですね。とても13歳とは思えない見事な演技でした。特にヒロインを演じた長澤樹さんは13歳とは思えないほどの大人びた魅力を持った素晴らしい演技でした。今後の映画界を牽引する役者になることは間違いありませんね。
ただ、不満点は少なからずあります。
他のレビュアーさんでも仰っている方がいますが、柳葉敏郎さんの演技が『踊る大捜査線』のような大仰な演技をしているのが気になりました。他の演者さんたちが比較的自然な演技をしているのに、一人だけ大仰な演技をしているとかなり目立ちます。もしかしたら監督も大御所の柳葉さんの演技に口出しできなかったのかもしれないと勘ぐってしまいますが、それは映画監督としても良くない姿勢ですし、柳葉さんにも失礼に当たる気がします。
あと、登場人物が結構多かったせいか、全部のキャラクターを描き切れていないようにも感じました。具体的に言えば生駒里奈演じる中学教師が抱えていた田舎コンプレックスのようなものが結局解決したんだかよくわからないエンディングになっていたように感じて、何だか中途半端なように感じました。
上記のような若干の不満点はありましたが、私の地元秋田県を舞台に映画を作ってくれたというだけでもありがたいので、是非多くの方に見ていただきたい映画になっていました。お勧めです。