「解決しないのが解決策」光を追いかけて masakingさんの映画レビュー(感想・評価)
解決しないのが解決策
先に鑑賞した何人かが「何にも解決しなくてちょっとモヤモヤするけどね」と笑いながら、「まあいい映画だよ」と教えてくれた。
確かに大手映画産業が手掛ければ、ちょっとした何か(例えば彰の画才)がきっかけになり、町が都合良く復興、閉校プランはギリギリで撤回、みんなハッピーな宴、というエンディングだろう。UFOはどうなるか知らんが。
現実はどこにも都合の良い話などなく、地方は衰退し、大人も子どもも夢や希望を語る余裕がない。何かを変えたくても「失敗した時は自己責任だからね」と機先を制され足踏みする。
生駒里奈演じる教師が「できることからやろうよ」と言い、柳葉敏郎演じる廃業間近の農業経営者が「ひさしぶりに本気出してみるか」と言い、何も解決していないのに、一筋の光を見出したようにして映画が終わるのは、だから仕方のないことなのだ。
ただ、それでいいとも思う。
経済的な側面だけの興亡など、これまで嫌というほど見てきた。たぶん多くの人たちが、刹那的に羽振りが良くなったかと思えば、虚栄を塗り重ね続けて疲弊したり、謙虚さを失って世間の片隅に追いやられたりしたたくさんの先例にうんざりしているんじゃないか。
ありきたりの人生かもしれないけれど、小さな一歩を踏み出して、少しだけ何かを変えてみることが、結果として何も生み出さなかったとしても、心の中に僅かに光が差すこともある。
生駒と柳葉のラストシーンでの表情は、そんなことを伝えているような気がした。
二人ともロケ地秋田の出身である。同郷の監督が、同郷の俳優に敬意を表して、与えた役柄とセリフだろう。
安易な解決策に振り回されず、地に足のついたエンディングとはこういうことを言うのだと思う。だから「いい映画だよという結論に納得するしかなかった。
余談だが、主演の長澤樹の唄は、ちょっとばかり驚いた。本編最大の意外なアクセントになっている。目力もあり、素敵な俳優に成長することを期待したい。