「新たな青春映画が生まれた」光を追いかけて ハルヒマンさんの映画レビュー(感想・評価)
新たな青春映画が生まれた
この映画は「青春映画」というカテゴリーに入るものだと思う。時代の違い、社会的背景の違い、地域や所属する集団の違いによって様々な青春群像がありうるので内容は千差万別であるが、自立する手前の未完成な人格に降り注ぐ様々な困難のなかで、戸惑いや苦悩や希望を描いている作品である。
事前に映画ドットコムで評価を見たのであるが、目立たない作品の割には高評価だったので期待を抱いて見に行った。結果は評価通りだったと言える。舞台は秋田の農村。金銭問題で落ち着かない家庭環境にあって不登校になってしまった真希と親の離婚で東京から親の実家に転居した彰が出会う。そして、UFOを見た共通の経験から互いに打ち解けていく。UFOは真希にとって唯一の逃げ場所だったのかもしれないし、彰にとっても慣れない土地と学校への不安からの逃げ場所だったのかもしれない。
二人が通う(べき)中学校は閉校になることが決まっており、生徒たちに不安が広がる。担任の女性教師は教師に自信が持てず悩んでいる。そして、農民は農業の行く末を案じている。テーマは、衰退する地域に住む人たちの不安の共有と再生への祈りの様な感情の共有ではないだろうか。特に若者に焦点が当たっているところが、青春映画と呼べる要素である。
最後は、不登校だった真希があるきっかけがあって教室に戻り、女教師も合流しクラス全員が集合する。ひと悶着あるが互いの気持ちが通い合って閉校を迎えることになる。彰が教室を出ていこうとする真希に向かって「逃げるな」と叫ぶが、ここが印象的にはやや意外なセリフで、主人公はずいぶん強くなったなあと思わせる。そうしないと最後の結末にしまりがなくなってしまうので、このような展開はやむをえないと思う。これこそが青春映画のよいところかもしれない。