「今一つ惜しい戦争批判作品」再会の夏 しずるさんの映画レビュー(感想・評価)
今一つ惜しい戦争批判作品
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粗筋から思い描いていたようなミステリー要素はあまり無い。
勲章を犬に与えて、国家侮辱罪に問われた兵士。その理由もすんなり自身が語っているし、その件について軍判事が聞き込みを行うのだが、周囲の人々に話を聞いて回る程度で、大した重大事実も出てこない。重要人物である兵士の恋人についても、然程の秘密がある訳でもない。
この物語の主題は、戦争の悲惨さ、非道さを訴えるものだと思う。
人間性を奪われ、命を消耗品として扱われ、上層部の愚かな命令に盲目的に従って、殺し、死ぬ事を強要された、最下層の兵士の怒り。
ならば、最も勇敢にそれを果たしたのは、戦場に付き従った犬ではないかという、強い憤り。
一方、国の従僕として、軍の規範と戦争の正当性を主張する立場である軍判事も、ソンムでの激戦を経験し、内心では国家の過ちを否定できない。
だからこそ兵士に同情的で、彼を放免しようと画策するのだが…。結果が、事件の引き金は、出征中の恋人の不貞を疑った自暴自棄行動でもあった、というオチ。唐突な痴話喧嘩のようなエピソードで、戦争批判のテーマのエッジの鋭さが削がれ、何だかモヤッと、感情の持っていき所がない感じに…。
同時代、同様のテーマを描いたものは数多く、他に良作があるだけに、イマイチ肩すかしな印象となってしまった。残念。
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